研究課題/領域番号 |
24520089
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研究機関 | 香川大学 |
研究代表者 |
石井 一也 香川大学, 法学部, 教授 (70294741)
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キーワード | ガンディー / ジンナー / ヒンドゥー / ムスリム / コミュナリズム / セキュラリズム |
研究概要 |
研究の第二年度は、平成25年8月から9月にかけて合衆国スタンフォード大学に客員研究員として赴任し、同大学図書館にて主としてM・ジンナーとの論争をめぐるガンディー独自の国家観を探求すべく、それに関連する先行研究の収集・分析を行なった。その際、同大学経済学部の雨宮健名誉教授より、フランスのシモーヌ・ヴィエイユがガンディーとも関連するとの示唆を受けた。なるほど、たとえば赤松明彦著『『バガヴァッド・ギーター』―神に人の苦悩は理解できるのか?』(岩波書店)によると、彼女もガンディーと同様ヒンドゥー教の聖典『バガヴァッド・ギーター』を重視していることが理解される。 平成25年12月には、日本平和学会設立40周年を記念する『平和を考えるための100冊+α』が法律文化社から出版され、その際、ガンディー著『真の独立への道―(ヒンドゥ・スワラージ)』の紹介文を寄稿した。他方、第一年度に理解したA・ジャラールの見解、すなわちムスリム連盟による「ラホール決議」が連邦内でのヒンドゥーによる多数派支配を回避するための「交渉のカード」にすぎなかったという理解を取り込んで、平成26年3月に著書『身の丈の経済論―ガンディー思想とその系譜』を法政大学出版局より刊行した。同書は、イヴァン・イリイチの「コンヴィヴィアリティ」(自立共生)の概念をひとつの軸としてガンディー思想を理解し、将来の世代をも念頭においた社会のあり方を示唆するものとして意味づけた。 なお、平成26年8月には、国際平和研究学会が、トルコ・イスタンブールで開催される予定であり、ここでの研究報告を準備中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画書に示した文献のうち、第二年度(平成25年度)に入手できた文献は、次のとおりである。Chakrabarty, Bidyut (2003) Communal Identityin India: Its Construction and Articulation in the Twentieth Century, Oxford University Press; Mujtaba Syed Ali (2002) The Demand ofr artition and the British Policy, Mittal; Butalia, urvash (2000) The Other Side of Silence: Voices from the Partition of India, Duke University Pressなどである。これらの文献によって、イギリスの分離政策とヒンドゥー・ムスリム双方の排他的他者意識が形成されてゆく経緯を予定通り分析しつつある。 まだ第一年度に理解したジャラールの見解を取り込んで著書を刊行できたことは、大きな収穫であった。
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今後の研究の推進方策 |
第三年度(平成26年度)は、最終年度に当たるので、研究をまとめてゆきたいと考えている。第三年度の課題は、ガンディーの国家観を西洋近代の国家観と比較検討することにある。すでにホッブスに関する研究書を分析しはじめており、ロックやモンテスキューなどとともに西欧の哲学者たちの描いた近代国家の像を明確にしてゆきたい。これまで理解してきたガンディーの国家観をこれらとの比較において分析し、その近代批判の意味を浮きぼりにすべく、さらなる分析を重ねてゆきたい。 なお、平成26年8月には、トルコ・イスタンブールで国際平和研究学会が開催されるので、研究報告を行なうべく準備を進めているところである。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度は、2月にインドに渡航する予定であったが、3月に予定されていた著書出版の最終段階にあって、予定を変更して国内に留まるべきであると判断された。このため、およそ18万円を平成26年度に繰り越すこととなった。 平成25年度に予定していたインドでの資料収集は、平成26年度に当初より予定していたインド渡航によってカバーできるものと考えている。それによって節約できた渡航費は、平成26年8月、学会報告のためのトルコへの渡航に充てることとしたい。
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