研究概要 |
2013年度は、主権論の法学における受容と展開に焦点を合わせ、国立公文書館や国立国会図書館憲政資料室および新聞資料室の所蔵する資料の収集を行った。すなわち、明治憲法制定に至るまでの主権概念や人格概念に関する資料、明治期の主権論争に関する資料、天皇機関説事件に関する資料、敗戦直後の現行憲法制定過程における主権に関する資料などである。1880年代から1940年代までの資料を網羅的に収集したため、さらなる分析を要するが、現段階では、主権概念に関しては主権そのものに関する論議よりも主権者が誰である(べき)かをめぐる論議に終始している傾向が強いように思われ、ヨーロッパにおける理念としての主権論の側面よりも政治的現実としての主権論が強く意識されており、そのため主権論の理念的効果としての人格概念の受容が混乱していたように思われる。「人体」としての人格論がその一例だが、この混乱は法人としての国家概念にも影響を与えており、さらには主権概念の変容をもたらしたのではないかとの仮説のもと、1930年代から1940年代の主権論を調査を行っている。 また、これらの研究につき、学内外の研究会で報告を行った。すなわち、「「形なき形」を把握すること――法的諸概念の受容と変容」および「人格概念の受容と変容――主権論の余白に」である。 さらに、日本における主権論の受容と変容の比較法学的・比較文化論的観点を練り上げるため、フランスの法学雑誌で論文を発表した。すなわち、 "Revisiter la notion de souverainete" (Droits, No.53)である。
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