本年度は、天道念仏に関するフィールド調査を3回実施し、天道神社および天道概念に関する資料研究を進め、その成果を、二つの学会で発表した。フィールド調査においては天道念仏と天道神社の普及地域の重複等に着目した調査を行い、それらがほとんど重複しないということが見出された。そしてその理由について資料を綿密に分析検討した結果、天道念仏の普及者である修験者ないし民間仏教者と、天道神社の設立背景と推定される道教・陰陽道思想を取り込んだ神祇祭祀の担い手にが、重複しないからということが浮かび上がってきた。他方、江戸期の思想史資料の熟読によって、「天道」という概念は、道教・陰陽道思想の影響があるということが浮かび上がっている。以上の内容を、本年度開催の二度の全国学会で報告した。学会では、天道に関連する諸思想の専門家と議論を深め、特に日本思想史学会が開催された愛知県の研究者による、津島信仰と天道神社の関係について重要な指摘を得、新たな調査の端緒となったことは大きな収穫であった。本年度の活動の概要は以下のとおりである。 フィールド調査の調査地 福島県、白河市(26年6月7日~26年6月9日)、静岡県西部(26年12月22日~27年1月5日)、栃木県・茨城県(27年3月23日~27年4月1日) 学会発表 第65回日本倫理学会学術大会(平成26年10月4日、於:東京都・国際基督教大学)にて、「江戸期日本における天道信仰の倫理思想史的考察」と題する発表、および日本思想史学会2014年度大会(平成26年10月25日、於:愛知県・愛知学院大学)にて 「天道信仰の思想史的検討―天道神社を中心として」と題する報告を行った。
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