研究課題/領域番号 |
24520099
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
上村 清雄 千葉大学, 文学部, 教授 (60344959)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | フランチェスコ・ディ・ジョルジョ / シエナ / ウルビーノ / フェデリコ・ダ・モンテフェルトロ / ジョヴァンニ・ディ・ステファノ / アントニオ・バリッリ / ピエトロ・ディ・フランチェスコ・オリオーリ / ラファエッロ・サンツィオ |
研究概要 |
本研究は、15世紀後半イタリアで活躍した中部イタリアはシエナ出身の画家、彫刻家、建築家フランチェスコ・ディ・ジョルジョ(1439-1501)を中心に、同時代のシエナと、同じく中部イタリアの宮廷都市ウルビーノとの芸術交流の実際を考察することを目的としている。フランチェスコは1477年からウルビーノ公爵フェデリコ・ダ・モンテフェルトロ(1422-82)に仕え、いずれもシエナ出身の彫刻家ジョヴァンニ・ディ・ステファノ(1444頃―1502年まで記録)、寄木細工をよくしたアントニオ・バリッリ(1453-1516)、そして画家ピエトロ・ディ・フランチェスコ・オリオーリ(1458-96)などと共同で、公爵宮殿の造営、聖堂の建設、領地内の城塞建設をおこなった。彼は1489年にシエナに戻っている。 本年度は、ウルビーノ滞在前後の時期に、これらの芸術家がシエナを中心におこなった活動に注目し、絵画作品か彫刻作品かなどの形状、制作年、そして技法・材質などに留意しながら作品の基本データの調査を文献収集とあわせておこなった。加えて、パリのルーヴル美術館で開催されたラファエッロ展の機会をとらえて作品熟覧をなし、ウルビーノに生まれた画家ラファエッロ・サンツィオ(1483-1520)の芸術活動を通して彼が芸術形成を遂げたウルビーノの文化的な背景の考察につとめた。 加えて、日本でのラファエッロ展にあわせて来日したウルビーノを統括するマルケ地方美術監督局長官マリア・ロザリア・ヴァラッツィ氏と2013年度のウルビーノでの現地調査に向けて意見交換をなすことが、また大学の公務によるイタリア出張の機会をとらえてシエナ=ウルビーノの芸術交流の研究を主導するシエナ大学教員アレッサンドロ・アンジェリーニ氏と面談することができ、バリッリとオリオーリとの密接な関係など本研究を進展するうえで不可欠な貴重な示唆を得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
フランチェスコ・ディ・ジョルジョと彼がウルビーノに伴った同じくシエナ出身の芸術家ジョヴァンニ・ディ・ステファノ、アントニオ・バリッリ、ピエトロ・ディ・フランチェスコ・オリオーリなどの、主にシエナにおける芸術活動の基本情報について、文献収集とあわせて調査することができた。 上記の作業のため、加えてウルビーノの宮廷文化の実質を理解するためこの都市で芸術形成をとげたラファエッロ芸術の考察をパリで開催された展覧会の機会をとらえて優先させたため2012年度はウルビーノでの現地調査を実施するにはいたらなかった。しかしながら、ウルビーノが位置するマルケ地方美術品総監督局長官マリア・ロザリア・ヴァラッツィ氏が来日したおり面談する機会を得て2013年度の調査について具体的な依頼をなすことができた。また大学の公務で訪れたイタリア出張の時に、2012年度当初に予定していた、シエナ大学教員アレッサンドロ・アンジェリーニ氏との面会を実現することが可能となり、意見交換をおこなった。同氏からは、フランチェスコ工房のなかでオリオーリが果たした重要な役割について貴重な助言を得ることができた。 ヴァラッツィ氏から、そしてアンジェリーニ氏からも2012年にウルビーノで開催された、15世紀ウルビーノに栄え、フランチェスコにも多大な影響をおよぼした遠近法文化を紹介する「理想都市」展の成果を参照することなど重要な示唆を得ることができ、現在関連文献を収集している。
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今後の研究の推進方策 |
フランチェスコ・ディ・ジョルジョがウルビーノに伴った同郷の芸術家のなかで特に画家ピエトロ・ディ・フランチェスコ・オリオーリと木工芸家アントニオ・バリッリの具体的な活動をあとづけながらフランチェスコのウルビーノ滞在の芸術上の成果を考察する。前者は壁画によって後者は寄木細工を通して聖堂など建築空間に深くかかわる造形をおこなっており、全体を指導したフランチェスコがどのような芸術理念にもとづいてウルビーノで芸術活動を展開したかを論及する。ウルビーノのストゥディオーロ(小書斎)など公爵宮殿内部装飾のみならず、おそらくフランチェスコの推薦によってバリッリが注文をうけたマルケ地方ファーノのサンタ・マリア・ヌォ―ヴァ聖堂内陣など同地方の関連作品も精査し、作品の基本情報を収集する。 同時に現地調査の結果をふまえて、マルケ地方美術品総監督局長官ヴァラッツィ氏、およびシエナ大学教員アンジェリーニ氏と意見交換をおこなう。あわせてウルビーノに設置されているマルケ地方美術品総監督局図書写真資料室、フィレンツェにあるドイツ美術史研究所、そしてシエナ美術品総監督局図書写真資料室、シエナ大学文学部図書写真資料室などで文献およびイメージ資料収集をおこなう。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当しない。
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