研究課題/領域番号 |
24520101
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
小田部 胤久 東京大学, 人文社会系研究科, 教授 (80211142)
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キーワード | 感性論としての美学 / 共通感覚 / 美的意識 / 構想力 / 身体美学 / 内官 |
研究概要 |
2013年度の実績は主に次の四点にある。 第一は、リチャード・シュスターマンとの共同研究を通して、身体意識としての感性の働きについて、とりわけ「共通感覚」論を通して考察を深めたことである。その成果の一部は、第19回国際美学会議においてリチャード・シュスターマンが組織したシンポジウム "Somaesthetics" における講演において発表した。 第二は、カントの『判断力批判』における「構想力」の働きについて再考を加えたことである。すなわち、カントが構想力の作用に関して用いている Auffassung/Zusammenfassung/Zusammensetzung/Darstellungといった術語に着目しつつ、『判断力批判』第一部における構想力についての理論がいかなる点において批判哲学に固有のものであり、またいかなる点で批判哲学の内部で独自性を有するのか、を明らかにした(序の点については研究室紀要に発表の予定である)。第三は、カントの『判断力批判』における「aesthetisch な意識」を「内官」とのかかわりにおいて明らかにしたことである。 第四に、当該シュアすなわちに関してニック・ザングウィル、フリードリヒ・フォルハルト、ダン・ブリージール・ジョージ・ディ・ジョヴァンニ、クリスティアン・ベンネといった海外研究者と合同のセミナーを行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2012年度は10本の、13年度は4本の論文を公表し、また、13年度には国際会議での招待講演をおこない、 当初予定していたとおりの成果をあげている。
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今後の研究の推進方策 |
2014年度は、第一に、13年度に発表したカント論を展開し(とりわけ、第二、第三の論点を統合しつつ)、美学会東部会例会において報告する予定である。 第二は、カント論を通して浮上してきた「構想力」について、とりわけポスト感度世代における「生産的構想力」の働きについて、感性論的見地から研究を行う。 第三に、近代日本の美学における感性論的モチーフを浮き彫りにする。近代日本の美学は「美的生活」という術語に代表されるように、日常的生活の内に見出される美的なものに着目してきた。こうした議論の蓄積を現代的な観点から再評価する。 なお、14年度冬学期にはケルン大学のモルフォーマタ研究所フェローに招聘されていたが、東京大学美学芸術学研究室の事情により招聘を断らざるをえなかったが、引き続き同研究所と密接な関係を持ち続ける予定である。
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