• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2012 年度 実施状況報告書

19世紀日欧米比較による「日本美術史」形成史の研究

研究課題

研究課題/領域番号 24520103
研究種目

基盤研究(C)

研究機関東京学芸大学

研究代表者

鈴木 廣之  東京学芸大学, 教育学部, 教授 (00132704)

研究期間 (年度) 2012-04-01 – 2015-03-31
キーワード日本美術史 / フェノロサ / アーネスト・サトウ
研究概要

本研究に最も関連の深い米国出身の学者・行政官・コレクター・教育者であったアーネスト・F・フェノロサ(1853~1908)について、資料調査を米国ハーバード大学(マサチューセッツ州ケンブリッジ市)で行なった。とくに同大学ホートン図書館と燕京図書館では自筆原稿と書簡類を含む一次史料の調査を、同大学美術図書館とフォッグ美術館では関連資料とフェノロサの収集品の調査を行なった。またボストン美術館東洋部では新たに発見されたフェノロサ収集の日本絵画に附属するフェノロサ自身による鑑定書の、同美術館附属図書館では同美術館の初期展覧会目録を含む稀覯冊子類の調査を行なった。
駐日英国外交官で草創期ジャパノロジストのアーネスト・サトウ(1843~1929)について、近代以前の美術に関する情報を豊富に含むサトウ編纂の『中部・北部日本旅行案内』(1881年初版、1884年改訂再版)に記載された奈良・三重・和歌山三県にまたがる旅行ルートの実地調査を行なった。本調査ではこの地方の有力社寺に継承された民俗文化財や仏教・神道美術にサトウが高い関心をもっていたことが確認できた。
フェノロサと親交のあった動物学者で日本美術コレクターのエドワード・S・モースとの往復書簡を含む関連資料について、所蔵先である米国ピーボディ博物館(マサチューセッツ州セーラム市)附属資料館が改装工事による閉館中であるため現地調査を断念し、同館の提供するウェブサイト上の画像データを検索・収集し、現地調査に代替した。また、フェノロサと岡倉天心ら、サトウと『日本の絵画芸術』(1886)の著者ウィリアム・アンダーソン(1842~1900)が明治十年代(1877~1886)に奈良で行なった宝物調査について、関連する国内の資料調査を次年度に計画しているので、そのための予備調査を行なった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

1878年(明治11)に初来日したフェノロサは、創立間もない東京大学で政治学などの教鞭を執ったが、日本美術に魅了され絵画の収集を行なうとともに東京美術学校の創設と明治政府の美術行政と文化財調査に大きな足跡を残した。1877年に初来日し、ボストン美術館の陶磁器コレクションの基礎を築いたモースとともにフェノロサの事績は本研究の最重要の対象である。ハーバード大学ホートン図書館に所蔵される最大規模のフェノロサ資料については主要資料を収録した村形明子編『アーネスト・F・フェノロサ資料』3巻(1982~87)があるが、和訳文による公刊であるため、原典および未収録資料の調査が不可欠である。今回の調査では全資料を調査でき、また同館の許可を得て重要資料のデジタル画像撮影を実施して当初の計画どおりの成果を挙げることができた。
フェノロサとモースの往復書簡を含む資料を所蔵するピーボディ博物館附属資料館については本研究実施期間内の再開は絶望的であるが、ボストン美術館で新たに発見されたフェノロサ鑑定書の調査を行なえたのは大きな成果であった。日本国内でフェノロサが発行した自筆鑑定書は数百点に上ると見られるが、これまでに知られた唯一例であった鑑定書の付属する絵画作品の所蔵先が移動し、調査が不可能であることが今回判明した。ボストン美術館の絵画作品に添付された鑑定書は第二例であるだけでなく、現在実見できる唯一の資料として貴重である。
国内調査では、アーネスト・サトウが『中部・北部日本旅行案内』編纂のために行なった国内旅行のうち、奈良・三重・和歌山のサトウの訪問先には重要な宝物類をもつ古社寺が集中している。その全行程のほぼ半分の現地調査を完了し、自身の日本文化研究の一環として国内旅行を行なったサトウの関心を知る手掛かりを得ることができたので、ほぼ順調な研究の進捗状況であると判断できる。

今後の研究の推進方策

フェノロサ資料については主要な在米資料調査を完了したので、25年度は以下のとおり在欧および国内の関連資料の調査を主に実施する計画である。また余裕があれば残りの在米資料についても調査を行なう。
1.在欧資料調査:アーネスト・サトウとウィリアム・アンダーソン、1876年(明治9)に来日したクリストファー・ドレッサーの関連資料の調査を大英博物館、ヴィクトリア・アンド・アルバート美術館等の英国国内の機関で行なう。また、1871年(明治4)に来日したアンリ・チェルヌスキとテオドール・デュレ、1876年(明治9)に来日したエミール・ギメとフェリックス・レガメの関連資料をギメ美術館、チェルヌスキ美術館(ともにパリ)等で行なう。
2.国内調査:E・サトウとW・アンダーソン、フェノロサと岡倉天心等が奈良で行なった宝物調査について、関連資料の調査を法隆寺、興福寺で行なう計画であるが、その前提として資料調査が可能であるかどうか両寺への問い合わせを行なう。フェノロサについては墓地のある滋賀県園城寺の関連資料の調査も計画する。また24年度に実施したE・サトウの国内旅行のうち奈良県内の有力社寺については現地調査を行なっていないので、これを鋭意実施する。
3.在米資料調査:24年度は最大規模のフェノロサ資料を有するホートン図書館等のハーバード大学諸施設において資料調査を行なったが、25年度は調査の進行状況を勘案して余裕があれば、残るフェノロサ資料を所蔵するフィラデルフィア美術館等でを実施する。

次年度の研究費の使用計画

該当なし。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2013 2012

すべて 雑誌論文 (2件)

  • [雑誌論文] 中国絵画の伝統と西洋画法―画の六法と郎世寧―2013

    • 著者名/発表者名
      藤田伸也
    • 雑誌名

      秋元ひろと編『因果の探究』三重大学出版会

      巻: 0 ページ: 145-157

  • [雑誌論文] 明治期の正倉院―宝物の調査・展示・評価―2012

    • 著者名/発表者名
      鈴木廣之
    • 雑誌名

      奈良国立博物館編『正倉院宝物に学ぶ』思文閣出版

      巻: 2 ページ: 3-19

URL: 

公開日: 2014-07-24  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi