本研究はW. G. ゼーバルト作品についての包括的研究である。より広い射程においては、歴史の表象をめぐって、文学、アート、歴史学を横断するような知の枠組みを探求する試みである。既存のテクストを自由に引用・改変し、キャプションのない写真図版をレイアウトして構築されたゼーバルトの作品を研究するにあたって、テクストの素材(元になった原テクスト)や使用した視覚イメージの典拠を見つけ、かつどのような加工や改変をゼーバルトが加えているのかを突き止めることは最大の課題であった。アーカイヴ調査や現地調査を行うことで、従来知られていなかった無数の事実を突き止め、制作過程の実像に肉薄することができた。
|