研究課題/領域番号 |
24520107
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 京都工芸繊維大学 |
研究代表者 |
平芳 幸浩 京都工芸繊維大学, 美術工芸資料館, 准教授 (50332193)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 近代美術 / 西洋文化受容 / マルセル・デュシャン / 瀧口修造 |
研究概要 |
マルセル・デュシャンの日本における受容の変遷とその意義についての研究の初年度として、大正末期から昭和初期にかけてのデュシャン受容の様態について調査研究を行った。 当時の美術系雑誌の中心を担っていた『みづゑ』ならびに『アトリヱ』の記事については網羅的な調査を行い、デュシャン関連の情報の抽出整理を行うとともに、どのような文脈、論点で扱われているか分析を行った。 特に、デュシャンを日本に初めて本格的に紹介した瀧口修造の執筆論文については、戦前期日本の前衛芸術運動とデュシャンやダダ、シュルレアリスムとの関係を探る観点から、デュシャン自身への言及にとどめず、関係動向についての関連論考全ての調査分析を行った。 上記の調査研究を通して、戦前期の日本におけるデュシャン受容の様相が明らかになった。日本においては、美術の範がヨーロッパに置かれていたため、ニューヨークを拠点としていたデュシャンについての情報は限られていたこと、本来時期を異にするダダとシュルレアリスムが日本では同時に流入したこと、などによって、デュシャンはダダに属する作家の一人として受容された。それゆえ、戦前期日本の芸術動向においてデュシャンは、非生産的な活動に終始した反面教師として受け取られる傾向が強かったことが明らかになった。それでもなお、先の瀧口修造や中山散生など、デュシャンの活動に積極的な意義を見出す人々もいた。 当該年度の上記研究についての成果は論文としてまとめている最中で、今年度前半期に学会にて発表を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
戦前期日本におけるマルセル・デュシャン受容の様態調査については、当初、国立国会図書館等の所蔵資料を逐一検索し閲覧する手順で行っていたため時間が予想以上にかかったが、主要雑誌『みづゑ』『アトリヱ』についてはマイクロフィルムが入手可能となったため、大幅に調査時間を短縮することが可能となった。しかし、経費限界のため、入手すべき巻号を限定せざるをえず、その選定に時間を要したことで入手時期が遅くなってしまったことが全体スケジュールに若干の影響を及ぼした。 結果的に調査全体はおおむね順調に進展したが、最終的な研究成果を論文にまとめて発表する部分のみが平成25年度にずれ込むこととなった。
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今後の研究の推進方策 |
まず平成24年度の研究についての成果論文は出来る限り早急にまとめて学会発表を行う。それと並行して平成25年度は当初計画通りに、戦後日本におけるマルセル・デュシャン受容についての調査研究を行う。1960年代を中心に、日本のネオ・ダダ動向との関係においてデュシャンがどのような経路で流入し、どのような観点から受容されていったのかを、当時の新聞雑誌における記事調査、実作品における反映調査、および当時の日本人作家への聞き取り調査によって明らかにしていく。全国の図書館に所蔵されている文献、全国の美術館に所蔵されている作品については、必要な限り実見調査を行う。作家への聞き取りについては、東京在住の作家およびアメリカ在住の作家について行う予定にしている。 平成26年度については、1980年代におけるデュシャン受容についての調査研究を行う予定である。文献調査、作品調査、聞き取り調査については平成25年度同様であるが、1980年代の状況においては、1981年にセゾン美術館で開かれた『マルセル・デュシャン展』の社会的影響を検討しなければならない。そのため、当時の展覧会関係者への聞き取り調査も行う予定にしている。 全調査研究の成果は最終的に論文を集成した冊子にまとめる予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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