本研究では、中国絵画の受容と変容という観点から、以下の内容を明らかにした。 狩野派の絵師にとって、中国で成立をした画題、様式を咀嚼するために有効であったのが、狩野探幽の時期に制作された一連の「流書手鑑」で、ここでは、画家名と画題、様式の固定化が進められた。しかし、李安忠のように、異なる二種の画題、様式のそれぞれが固定的に伝承された例もあった。一方、中国伝来の画題が和様化した事例として酒飯論絵巻をあげた。中国で成立をした酒茶論をベースに成立をした酒飯論絵巻は、繰り返し模本が制作されることにより、様式と図像の踏襲がはかられるが、そこでは、白描本の酒飯論絵巻が重要な役割を果たしていることを指摘した。
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