具体美術協会(略称:具体、1954-1972年)のリーダーであった吉原治良(1905-1972年)が、いかに海外の美術関係者と交流し、具体の活動を海外へと展開したか、その具体的過程と戦略を解明するために、次の点に着目して研究を進めた。 1、大阪大学総合学術博物館寄託の具体関連資料整理・調査 (1)国内外の美術関係者と交わされた書簡(2)具体の活動拠点となったグタイピナコテカ関連資料 2、海外に保管されている具体関連資料の調査 3、元具体会員や関係者への聞き取り調査 1-(1) は学生の協力を得て、平成26年度に簡易データベース作成を完了した。1-(2) は平成25年度に簡易データベース作成を完了し、大阪大学総合学術博物館での「オオサカがとんがっていた時代」展と、同展関連書籍の『戦後大阪のアヴァンギャルド芸術』(大阪大学出版会)で成果を発表した。2は、平成24年度にゲッティ・リサーチ・インスティテュートとニューヨーク近代美術館、平成25年度にスミソニアンのアメリカ美術アーカイヴと、前年に引き続きニューヨーク近代美術館でそれぞれ具体関連資料を調査した。その他、ニューヨーク州立大学バッファロー校所蔵の資料についても内容を確認した。当初予定していたニューヨーク州立大学ポツダム校とパリのスタドラー画廊は、先方の都合により調査できなかったため今後の課題となるが、実施した一連の調査でほぼ全体像を把握できたといえる。このうち書簡については1-(1) と統合し、特にマーサ・ジャクソン画廊との密接な交流の過程が判明した。それは将来、大阪新美術館で設置が目指されている具体アーカイヴに生かす予定である。3については、平成24年度は元具体会員3名と評論家1名、25年度は元具体会員1名、26年度は2名にそれぞれグタイピナコテカや海外との交流を中心に聞き取り、要約内容は上記展覧会と書籍に反映させた。
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