研究課題/領域番号 |
24520114
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研究機関 | 金沢美術工芸大学 |
研究代表者 |
保井 亜弓 金沢美術工芸大学, 美術工芸学部, 教授 (30275086)
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キーワード | 国際情報交換 ドイツ、スイス、オランダ / ザントラルト / アマーバッハ / 銅版画 / 版画史 / コレクション |
研究概要 |
本研究の2年目である25年度は、関連文献の収集とともに、現地調査、ザントラルトの『ドイツのアカデミー』およびすでに収集したテクストの読解を行った。 現地調査(9月15-30)では、まずミュンヘンの中央美術研究所において、文献資料収集を行った。さらに昨年度行う予定であったバーゼルでの調査を後半に行った。バーゼルでは、バーゼル美術館版画素描室において、アマーバッハのコレクション目録の調査を中心に行った。非常に状態が悪いため、通常は閲覧することができないところを、主任学芸員クリスチャン・ミュラー博士のご厚意により、確認することができた。また、現在はバーゼル大学の一部である薬学博物館は、かつてアマーバッハ家が所有しており、公衆浴場を営んでいたこともわかった。アマーバッハのコレクションは美術館のみならず、歴史博物館にも多く所蔵され、その規模の大きさを実感した。 ザントラルトの『ドイツのアカデミー』については、イスラエル・ファン・メッケネムの項目に初期版画に関する記述がある。この部分は試訳を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度の現地調査では、バーゼルにおいてアマーバッハのコレクション目録を確認できたことは大きな収穫であった。 アマーバッハのコレクション目録は、ドイツ語圏に於ける初期のコレクション目録としてきわめて重要である。この目録には様々な品が含まれており、版画はその一部である。この目録の版画の記述について注目すべきは、逸名の版画家やモノグラミストの版画であり、その中に初期版画が含まれている。それかがどのように記述されているか、を確認することができたことは、本研究においてたいへん意義深かった。 また、ミュンヘンの中央美術史研究所では、最新の研究論文の収集を行うことができた。 本研究の出発点と言えるザントラルトの初期版画にかんする部分の試訳を終えると同時に、他のテクストの確認も行うことができた。
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今後の研究の推進方策 |
来年度は、ベルリン、ミュンヘン、ウィーンを中心に海外調査を行う予定である。 海外協力者である、アド・ステインマン博士の来日に際して、意見交換を行う。またベルリン国立版画素描室のホルム・ベーヴァース博士とは現地で意見交換を行う予定している。ウィーンでは、アルベルティーナ版画素描館に所蔵される、ショーンガウワーの銅版画をオルミュッッがコピーした作品に書かれた同時代の記述を確認する。 ザントラルトおよびその他のテクストの読解を進める。ザンドラルトの『ドイツのアカデミー』は先行するヴァザーリやファン・マンデルの影響を受けており、参照する必要があるが、年度末に両者の新たな邦訳がでたため参考にしたい。ザントラルトについては翻訳を精査し、その他のテクストの翻訳作業を進める。 これらの調査および文献研究の成果をまとめて報告書を作成する。
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