研究課題/領域番号 |
24520116
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研究機関 | 実践女子大学 |
研究代表者 |
椎原 伸博 実践女子大学, 文学部, 教授 (20276679)
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キーワード | 持続可能性 / アートプロジェクト / アートNPO / まちづくり / 創造都市 / 産業遺産 / 文化的景観 / 環境美学 |
研究概要 |
本研究は、日常生活における文化芸術の分野ての「持続可能性」を意識させる実践に注目し、それらのフィールドワークを通して、新たな価値創造の可能性について考察することを目的とする。 研究二年度も「国内旅費」を用いて、全国のアートNPOやアートプロジェクト、まちづくりとアートの関係性等を調査した。具体的には、富山県のアートNPOヒミング、神戸ビエンナーレ、あいちトリエンナーレ2013などである。それらは、地域において文化芸術の実践を持続的に発展させることが、住民が地域の創造的価値を認識し、それが豊かな生活の基盤となりうることを確認した。 一方、エコロジーと現代アートの協働関係の視点から、ドイツのIBAエムシャーパーク事業の調査を行った。そこでは、いわば「負」の遺産ともいうべき炭坑の記憶が、都市計画においてどのように保存されているかを中心に調査した。その際、当初現代アートが重要な役割を果たしていたが、現在においては、それよりも都市の創造性に重点がおかる傾向が強いことを確認した。 本研究は、フィールドワークを中心とする研究であり、様々な調査により、同じ関心をもち、それを実際に活動している人たちとの 意見交換とネットワークの構築は、大きな成果であった。意見交換の結果を「日常性の美学」という側面から理論化していく作業は、特に 英米の「環境美学」に関する論文や著作に注目しつつ遂行した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究二年度は、精力的に国内のアートプレジェクト、アートNPOの調査を行い、一定の成果をあげることが出来た。特に、あいちトリエンナーレ2013に関連する調査は有益だった。 また、研究初年度に予定していたドイツの「IBAエムシャーパーク事業」の調査を行うことが出きたので、昨年の遅れをとりもどし、現在研究はおおむね順調に進展している。この調査により、近代化産業遺産やエコロジーの側面から、都市再生 、文化的景観の創出についての研究が進み、それと関係する国内事例(富岡製糸工場、長崎の産業遺産群等)も調査を遂行したため、基礎的なデータは大体収集することができた。 研究成果は、7月にポーランドのクラクフで行われた第19回国際美学会議と、12月に九州大学で開催された日本アートマネジメント学会全国大会等で公表し、そこでの意見交換が有益であった。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度は、当初の予定通り「国内旅費」により、アートプロジェクト、アートNPO、まちづくりとアートの関係性の調査を行う。 また、東日本大震災以降の復興事業における、文化芸術事業の検証という側面から、引き続き現地調査を行う。 「外国旅費」では、 震災復興関連でイタリア共和国シチリア島のジベリーナの調査をを行い、震災復興における都市計画とアートの関係性を持続可能性の視点から調査する。研究成果は、本年11月に実践女子大学で開催される日本アートマネジメント学会の全国大会や、実践女子学園アート・コミュニケーション研究所が行うシンポジウム等で発表していく。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究所年度に予定していたドイツIBAエムシャーパークの調査が、1年順延となり、旅費の未消化分が翌年に繰り越されているため。 研究二年度に予定していた南イタリアの調査を行う。
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