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2013 年度 実施状況報告書

日本の祖師・高僧像の総合的研究-制作目的と意義からの新たな解釈-

研究課題

研究課題/領域番号 24520117
研究機関早稲田大学

研究代表者

小野 佳代  早稲田大学, 総合研究機構, 招聘研究員 (60386563)

キーワード祖師像 / 高僧像 / 聖僧
研究概要

日本における祖師・高僧像は、宗祖の像あるいは寺院の開山の像として、古代より仏像と変らぬ礼拝対象として祀られてきた。しかし、各像の制作背景や歴史的経緯を詳細に検討してみると、従来考えられてきた「思慕の像」「礼拝の像」「師資相承の像」という枠組みでは捉えきれない僧形像が多数存在することがみえてきた。そこで本研究では、祖師像・高僧像・聖僧といった、いわゆる僧形の像を取り上げ、旧来の「時代」「様式」「宗派」による分類法を一度取り除き、新たに僧形像が制作された「目的」「意味」「役割」によって分類し直すことによって、日本における祖師・高僧像制作の実態や本質を解明することを目的とする。
平成25年度は、奈良時代から平安時代に制作された祖師・高僧の現存作例を取り上げ、制作目的や意義のほか、祖師・高僧像が寺院内で果たした役割等を明らかにすることを目指した。まず岡寺の義淵僧正坐像については、従来より義淵の肖像ではなく、賓頭盧像または僧形文殊像ではないかとの見方が強かったが、検討の結果、賓頭盧像である可能性が高まった。
つぎに、立石寺慈覚大師円仁像の研究に取り組んだ。本像は昭和23年に立石寺の円仁入定窟内の金棺の中より人骨とともに発見された9世紀の木造頭部である。この頭部が円仁像である確証はないものの、1163年の奥書をもつ大東急記念文庫所蔵の『高僧像』に描かれた円仁像と顔の特徴が酷似しているのは注目される。先学によって指摘されてきたとおり、立石寺像は円仁像である可能性は極めて高い。この木造頭部が本来はどこで制作されたものであったかについては、今後さらに調査を進めていきたい。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

平成25年度は、「奈良・平安時代の祖師・高僧像の調査研究」に着手した。岡寺義淵僧正像と黒石寺慈覚大師円仁像の研究に取り組んだが、想定以上の時間を要してしまい、本来ならば他にも平安時代の肖像彫刻(園城寺智証大師円珍像や法隆寺夢殿道詮律師像)の研究も実施したいところであったが、それがかなわなかったのが反省点としてあげられる。ただ、昨年の研究の進捗状況が大変に順調であったため、全体的な流れとしてはおおむね順調に進展しているといえるだろう。奈良時代の祖師・高僧像の研究はほぼ終了した。今後はさらに平安時代の祖師・高僧像の調査対象を増やして、研究の精度を高めていきたい。

今後の研究の推進方策

今後は、平安時代の祖師・高僧像の調査研究に加えて、鎌倉時代の現存作例についても取り組んでいきたい。各作例の制作目的や意義のほか、祖師・高僧像が寺院内で果たした役割等を中心に考察し、日本における祖師・高僧像制作の実態や本質を解明することを目指したい。今後取り上げる作例としては、東寺御影堂弘法大師空海像、東大寺俊乗房重源像、六波羅蜜寺空也上人像、西大寺興正菩薩叡尊像などを予定している。研究手法としては、調査対象とする祖師・高僧像の制作状況・安置状況に関する史料(寺院に残された縁起等の古記録など)を幅広く収集していくとともに、実地調査を実施し、各時代の祖師・高僧像の制作目的・意義・役割の点から検討を加えていきたい。

次年度の研究費の使用計画

祖師・高僧像に関する関連図書資料(奈良時代、平安時代中心)が予定冊数分、入手できなかったために、20万円弱の次年度使用額が生じてしまった。平安時代の祖師・高僧像の調査研究が予定どおりに進まなかったこととも関係している。今後早急に研究に取り組み、関連図書資料の購入を進めていきたい。
平成26年度は平安時代の祖師・高僧像の調査研究と併せて、鎌倉時代の祖師・高僧像の研究も進めていく予定である。研究の進み具合を見ながら、平安時代および鎌倉時代の祖師・高僧像に関する図書資料を購入していきたい。

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公開日: 2015-05-28  

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