研究課題/領域番号 |
24520118
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
肥田 路美 早稲田大学, 文学学術院, 教授 (00318718)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | 仏教 / 中国 / インド / 道宣 / 瑞像 / 阿育王信仰 / 訳注 / 国際情報交換 |
研究概要 |
唐代の仏教界を代表する律宗の学匠であり、屈指の仏教史家である道宣の著作『集神州三宝感通録』のうち、歴代各地で特に篤い信仰を得た仏像の霊験説話を集めた巻中について、美術史の見地から全文の現代語訳と詳細な注解をおこなうことが、本研究の目的である。研究の成果は訳注の形式で毎年度刊行する計画である。 初年度にあたる今年度は、冒頭の序、目録、東漢洛陽画釈迦像縁一、南呉建鄴金像従地出縁二、西晋呉郡石像浮江縁三、西晋泰山七国金像瑞縁四、東晋楊都金像出渚縁五まで(『大正新脩大蔵経』巻52、413頁a~414頁c)について、現代語訳と注解を完成させた。注解の項目は総計125にのぼった。その主な項目は以下のとおりである。 道宣が参照した群録、明帝の感夢求法説、優填王の釈迦画像、南宮の清凉台、後園、倚像、白馬寺伝説の変遷と道宣活躍期におけるその受容、霊験像と請雨、画工、地に埋まっていた金像、浮江の石像、通玄寺、維衛仏、迦葉仏、泰山朗公寺、釈僧朗、阿育王像、長干寺像の模作と流布、光背の七楽天と二菩薩、陳末の怪異譚、七宝冠と錦帽、宝冠の着脱、仏像の坐勢の改変、大興善寺での安置。 これらは、中原、江南における初伝期の仏像受容のあり方、江南での阿育王像信仰、インド由来と称する仏像の造形的特徴、王権との関わりなどを具体的な事柄から考察したもので、関連作品の調査をニューデリー国立博物館、マトゥラー博物館等で実施した。訳注の総ページ数は、A4版で約65頁である。 この成果については、早稲田大学奈良美術研究所発行の学術誌『奈良美術研究』に掲載公開する計画であったが、雑誌自体の発行の頓挫により、不本意ながら年度内の成果公開ができず、やむを得ず翌年度に延期することとした。なお、本年度は14名のポスドク、大学院生らの研究協力を得た。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究自体については概ね順調に進捗しているが、当該年度の成果について年度内に学術誌上で公開する計画については、遅れが生じている。当初の予定では、本研究の前身である「『集神州三宝感通録』の美術史料論的研究」(2009~2011年、基盤研究(C))で行ってきたと同様に、研究代表者が所属する早稲田大学の奈良美術研究所が発行する学術誌『奈良美術研究』誌に投稿掲載することで、成果を毎年度逐次公開し、関係各方面からの助言や示教を得て、翌年度の研究に活かす計画であった。しかしながら、発行元の一方的都合により、当該雑誌の本年度の刊行が頓挫したため、まことに不本意ながら成果の掲載先を失い、完成原稿を抱えたまま年度を越すこととなった。
|
今後の研究の推進方策 |
上記の理由により、2012年度の成果物の掲載予定誌に対する投稿の経費(版組のための編集費、所要頁分の印刷費)が支出できなかったため、次年度へ繰り越される研究費が生じた。これについては、翌2013年度内に新たな掲載媒体を確保し、すでに完成している訳注原稿(A4版約65頁分)を刊行公開する予定である。2013年度の研究については、同文献の第六縁から第八縁の訳注を計画しており、この成果と一緒に公開することで、投稿経費の合理的使用をはかりたい。
|
次年度の研究費の使用計画 |
上記のとおり、繰越される研究費は、新たに確保する発表媒体への投稿経費(版組のための編集費、所要頁分(A4版約65ページ)の印刷費)に充てる計画である。なお、次年度2013年度の訳注の成果と同時に公開することで、投稿経費の合理的使用をはかりたい。
|