研究課題/領域番号 |
24520118
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
肥田 路美 早稲田大学, 文学学術院, 教授 (00318718)
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キーワード | 道宣 / 隋唐時代 / 六朝時代 / 霊験 / 仏像 |
研究概要 |
本年度は、南山律師導線の著作『集神州三宝感通録』巻中の「東晋襄陽金像遊山縁六」「東晋荊州金像遠降縁七」「東晋呉興金像出水縁八」「東晋会稽木像香瑞縁九」「東晋呉郡金像伝真縁十」「東晋東掖門金像出地縁十一」「東晋徐州太子思惟像縁十二」「東晋廬山文殊金像縁十三」について、『大正新脩大蔵経』巻五二、四一四頁C~四一七頁Cを底本として現代語訳と詳細な注釈を完成させた。付注項目は合計で177にのぼる。 特に、出土遺物、関係の歴史文献、先行研究等に広く目配りしつつ美術史の見地から独自の解説をおこなった項目のうち、主なものとしては「檀渓寺」「丈八仏」「銘文を施す位置」「像の遺跡」「模によって鋳造すること」「長沙寺」「荊楚での仏教信仰」「育王寺の像」「罽賓の僧伽難陀禅師」「仏塔内の行道」「梁武帝の仏教信仰」「同泰寺」「両厦」「脇侍菩薩像の追加」「銅鑊」「仏殿の規模と仏像安置の形態」「垂木・桁・藻井の宝華文」「長沙寺阿育王像のその後」「仏像の出現に伴う金光」「三尺」「夢に仏を見たこと」「金の釵による補修」「娘の昇天と紫雲」「齋会と仏像」「戴逵」「中古製像」「霊宝寺の仏像」「釈迦文仏」「銅盤と仏像が地中から掘り出されたこと」「宋祖」「瓦官寺」「太子思惟像」「阿育王の造った文殊師利菩薩」「鑊」「八万四千の塔と仏像の建立」「廬山における念仏」「慧遠の墓」などがある。 あわせて、初年度にあたる昨年度の成果と今年度分を合冊の形で、A4版で総頁数280余の冊子『美術史料として読む『集神州三宝感通録』―釈読と研究―(五)~(七)』にまとめた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題は三年間で『集神州三宝感通録』巻中の釈読を行う計画であるが、二年経過したところで全五十縁のうち第十三縁まで完了した。それだけを見れば、ようやく全体の四分の一が完成しただけのようだが、本テキストのこの前半部は、今年度取り組んだ第七縁にみるようにそれぞれ長大なうえ、長干寺阿育王像、長沙寺阿育王像といった代表的な瑞像の縁を含んでおり、後半部に比して内容的にも分量的にもはるかに多い。したがって、そこを完了させたことから、本研究課題の進展が概ね順調であると評せる。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度にあたる2014年度は、同書第十四縁から第三十縁までの現代語訳と注釈をおこなう。これまでと同様に、研究協力者として大学院生およびポストドクター、計十名の協力を得る予定である。年度末には、一年分の成果とともに、これまでの達成分についての索引を作成し、冊子として刊行のうえ国内外の関係研究者、関係機関に配布して意見や教示を求める計画である。
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次年度の研究費の使用計画 |
本研究課題では、当該年度の成果を冊子体のかたちで刊行し、国内外の関係研究者・研究機関に配布することで、各方面から釈読・訳注に関する問題点や助言を聴取し、随時増補改訂をおこなうとともに、次年度の対象箇所の釈読に活かす方針を取っている。2013年度にも釈読の結果の刊行作業に努めたが、全270頁に及ぶため編集に手間取り、印刷・製本費の印刷業者(株スマッシュ)への支払いが、年度内に間に合わなくなったため。 当該の次年度使用額は、印刷業者(株スマッシュ)への『美術史料として読む『集神州三宝感通録』―釈読と研究―(五)~(七)』の印刷・製本費として使用する。
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