研究課題/領域番号 |
24520120
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 京都造形芸術大学 |
研究代表者 |
林 洋子 京都造形芸術大学, 芸術学部, 准教授 (30340524)
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研究分担者 |
間瀬 幸江 早稲田大学, 文学学術院, 助教 (20339724)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | パリ / フランス / 両大戦間 / 1920年代 / 挿絵本 / 出版文化 / 藤田嗣治 / ジロドゥ |
研究概要 |
画家・藤田藤田嗣治を美術史的立場から研究する研究代表者(林)と作家ジャン・ジロドゥーを比較文学の領域から考える研究分担者(間瀬)による共同研究である。二人の共作である挿絵本『イメージとのたたかい』(1941)について、その出版経緯を探っている。渋谷区立松涛美術館ならびに北海道立近代美術館で開催された「藤田嗣治と愛書都市パリ展」の企画段階から林が関わり、間瀬もカタログに画家エルミーヌ・ダヴィッドとジロドゥーについてテキストを寄稿した。道立近代美術館が収集するダヴィッドの手になる挿絵本の書き手の相当数がジロドゥーであることがわかったためである。札幌での展覧会期中にあたる2012年10月14日には同館を会場にシンポジウム「両大戦間パリの挿絵本文化をめぐって」を開催し、林、間瀬に加えて、展覧会担当学芸員からも発表を受け、とくにパリで刊行された複数の作家と画家による挿絵本『タブロー・ド・パリ』(1927)と『パリ 1937』(1937)等の分析を通じて、挿絵画家かつ装丁家であり、かつ出版コーディネーターとして活動していたジャン=ガブリエル・ダラニエ(ダラニエス)が、藤田とジロドゥーの『イメージのたたかい』を実現したことがほぼわかってきた。間瀬は本研究費により、パリ等での現地調査を行い、ブリュッセル在住のダラニエ研究者兼コレクターを訪ね、さらにパリでダヴィッドのコレクターとも面会するなど、シンポジウムで得た仮説を補完すべく、両者の出版物を多数調査した。ダヴィッドもダラニエとのかかわりがあり、両大戦間パリの画家・作家・出版人等のネットワークが浮かび上がってきている。あわせて、藤田の日本での装幀活動を概観する展覧会「藤田嗣治 本のしごと」展(千代田区立日比谷図書文化館、2013年4-6月)にも企画段階から協力した。25年度に開催するシンポジウム第二弾の企画を進行している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
美術館での展覧会やシンポジウムの企画運営に参画することで、予想以上の情報収集とネットワークを得ることができた。北海道立近代美術館やうらわ美術館の挿絵本コレクションだけでなく、東京富士美術館などこれまで知ることがなかったコレクションに気付いた。情報量が多いため、「挿絵本データベース」の構築が追い付いていない部分があるが、その点を次年度に追いついていく必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
二名による、藤田とジロドゥーの一度きりの合作からスタートした研究だが、初年度のシンポジウムや展覧会を通じて、関心を持ってくださる中堅・若手世代の研究者が出てきたことはたいへんな喜びである。次年度にはそうした層を取り込みつつ、小研究会を開いていく方針である。あくまでも「両大戦間パリ」を軸としつつも、ほかの研究者の協力を得て視野を時代を前後に、地域を日本やほかの欧米の国々にも広げることで、「両大戦間パリ」の独自性と普遍性双方を把握していきたい。平成25年度より研究協力者(間瀬)が職場を東京から仙台に移したため、京都と仙台で遠距離の共同研究となるが、東京での支援者(若手研究者や学生)を得るなどして、有効に交通費を使っていく必要がある。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度は三年間の二年目にあたり、初年度の研究成果を受けて、シンポジウム第二弾「日仏出版文化の出会い」を開催する(2013年9月21日、東京・日仏会館)。初年度はフランスの出版文化を検討したが、ここでは明治以降日本がフランス、西欧の出版文化と出会うことで本の体裁も含めてどのように変容していったか、また反対にフランスの出版文化になんらかの影響を与えることがあったのか検証していく。トピックとしては「19世紀日本の出板文化」「和装本から洋装本へ」「ジョルジュ・ビゴー」「ちりめん本」などである。基調講演者として、フランスから研究者一名(フィリップ・ル・ストゥム氏、ブルターニュ県立美術館館長)を招聘するため、今年度の研究費の大半はこのシンポジウムの運営についやされる。共同開催する日仏会館からの通訳費等の援助も受けて、国際研究として成果を高めたい。平成25年末までに前年度と今年度のシンポジウム発表者に原稿提出いただき、次年度に刊行予定の報告書を兼ねた書籍の編集にあたっていく。現在、複数の出版社と交渉中である。夏までにシンポジウムの参加メンバーを中心に小研究会を都内で持ち、秋のシンポジウムでの論点を調整していく。年度末には林がパリ等での現物調査に出向く予定である。
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