初年度、2年度には、護立旧蔵の古美術及び近代美術作品リストを作成した。調査を通じて、護立コレクションが従来言われていたよりも広範囲にわたっていることが明らかになった。 最終年度には作成したリストを補強するとともに、本リストをてがかりに、護立が支援した近代陶芸家河井寬次郞との関係について検討し、これまで言われてきたことの一部に事実と異なる点があることが明らかになった。本研究成果は東洋陶磁学会(平成26年10月4日)で発表した。 また、護立旧蔵品の中でも重要な位置を占める東洋仏教遺物の検討を行い、特に著名な旧宝慶寺石仏の蒐集について、原三溪との関わりを中心に検討した。本研究成果は『京都造形芸術大学紀要』(第18号)にまとめた。 護立の美術作品購入には、地元の熊本ゆかりの宮本武蔵の作品が多く含まれており、当時の武蔵再評価とも深く関わっていたことが分かった。護立が白隠、仙崖といった近世禅画をいち早く再評価したこととあわせ、武蔵に関するコレクションについても、文学史を含めたより深い検討の必要があり、今後の課題としたい。 さらに本研究の過程で、熊本県立美術館、永青文庫の担当者と情報交換し、護立の事業の規模が相当なものであったことも判明した。旧華族であると同時に旧藩主として多角的な事業を行っていたことにより、護立は自由に蒐集活動を行うことができたのである。まだ屎尿方を得た段階であるが、いずれ多方面からの協力を得て、改めて検討を重ねたい。
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