最終年次にあたる平成26年度の主な研究成果は以下の通りである。 当該年度の目標は当初の計画通り長江下流域の早期仏像とりわけ三国時代から制作された神亭壺を中心とした調査研究であった。 調査日と調査地は、平成26年5月1日 ~5月6日に中国江蘇省南京市および浙江省紹興市、寧波市、平成26年7月30日 ~8月7日に江蘇省蘇州市・揚州市周辺および浙江省杭州市周辺、平成26年12月27日 ~平成27年1月5日に北京市、四川省成都市、上海市であり、またこれら調査の前後に早稲田大学中央図書館において調査地や関連遺跡に関する文献調査を行った。 各地での調査内容は、江蘇省では南京市のリニューアル間もない南京博物院と南京市博物館、また蘇州博物館、鎮江市博物館を訪れ、浙江省では浙江省博物館、新建の紹興市博物館と寧波博物館を訪れて早期仏像および関連出土遺物の調査を行った。なかでもリニューアルや新建の博物館においては従来の展示に比して作例数が増加しており、それを詳しく観察する機会に恵まれたことは今年度の調査の大きな収穫であった。さらに北京市中国国家博物館では仏教東漸に関する特別展、上海博物館では館蔵品の早期仏像の調査に加えて訪問時に開催されていたコルカタ・インド博物館所蔵のインド・ガンダーラ仏の特別展を拝観する機会に恵まれた。さらに平成26年12月に四川省成都市内から南北朝時代の石仏が大量に発掘された報道があり、それをもとに現地を訪れ、当地の早期仏像に続く中国南北朝時代の仏教美術のあり方を考えるうえで大変興味深い視点を得ることが出来た。今後の研究に繋げたいと考えている。 こうした最終年次の調査結果は、従来から進めている文献研究の成果を勘案しつつ、引き続き整理検討中であるが、その成果の一部は論文として現在執筆中であり、平成27年度中に発行される論文集に掲載予定である。
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