研究課題/領域番号 |
24520125
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 独立行政法人国立文化財機構東京文化財研究所 |
研究代表者 |
早川 泰弘 独立行政法人国立文化財機構東京文化財研究所, 保存修復科学センター, 分析科学研究室長 (20290869)
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研究分担者 |
城野 誠冶 独立行政法人国立文化財機構東京文化財研究所, 企画情報部, 専門職員 (70470028)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 彩色材料 / 白色絵具 / 蛍光X線分析 / 日本画 |
研究概要 |
日本絵画に使われる彩色材料の中で、白色顔料は古代から中世にかけては鉛白が中心だが、近世の絵画では胡粉が主として使われている。そこで本研究では、白色顔料の転換点に近いと考えられている室町期から江戸期の日本絵画を中心に、彩色材料に関する非破壊・非接触の科学調査を実施し、用いられている白色顔料の種類とその利用方法を明らかにすることを目的とした。 平成24年度は、重要文化財泰西王侯騎馬図屏風(サントリー美術館、神戸市立博物館所蔵)重要文化財洋人奏楽図屏風(永青文庫美術館所蔵)、万国絵図屏風(宮内庁三の丸尚蔵館所蔵)といった桃山期を代表する初期洋風画を調査することができた。洋人奏楽図屏風から検出された白色顔料は鉛白だけであったが、泰西王侯騎馬図屏風および万国絵図屏風では白色顔料のほとんどは鉛白であるが、一部において胡粉が使われていることが見出された。一つの絵画作品の中に鉛白と胡粉が使い分けられている例は、やはり桃山期の作例と考えられている初期洋風画の一部でこれまでに見いだされており、白色顔料の転換点を考えていくうえで、重要な結果を得ることができた。また、江戸初期に狩野派によって製作されたと考えられている重要文化財名古屋城障壁画(名古屋市所蔵)についても彩色材料調査を実施することができた。この調査では、複数の障壁画を調査したが、白色顔料としては胡粉だけしか検出されなかった。鉛白から胡粉への転換は、狩野派が関与しているとする説が有力であり、狩野派が製作した絵画に関する調査が今後重要な鍵になると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
日本絵画の彩色材料を科学的に調査していく中で、ある時代を境にして白色顔料が明らかに切り替わっていることが分かってきた。これまでの調査結果から考えると、室町期から江戸初期にかけて鉛白から胡粉への転換が行われていると推測できる。そのためには、この転換点に近い室町期から江戸初期にかけての絵画作品を重点的に調査研究することが必要である。平成24~26年度の3か年で室町期から江戸期の絵画を10~15作品調査する計画である。平成24年度はこのうち4作品を調査することができ、順調に進展している。また、調査結果についても、鉛白と胡粉が両方使われている絵画作品を見出すことができ、研究は順調である。
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今後の研究の推進方策 |
平成25、26年度も引き続き、室町期から江戸期の絵画作品の調査を進める。また、参考作品として平安~鎌倉期の絵画作品に関する調査も併せて進める予定である。さらに、これまでに取得したデータに関する整理と公表を進めたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
調査に際して必要となる調査機器の治具類の充実を図る。また、データ保存に必要となるHDD等のメディアの購入が必要である。
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