本研究ではアジア螺鈿史の全体像把握理解を目的として各地での作品や工房調査を行い、成果公表に努めた。 調査はアジアや欧米各地において精力的に実施し、印刷物やウェブ・データでは分からない詳細な技術や文様情報などを確認した。主な成果として、中国唐代装飾鏡の検討により、貝の切断工具が糸鋸では無かった可能性や漆と自然樹脂とが充填する厚さで使い分けられた可能性などを論じた。朝鮮半島螺鈿の貝加工技術についての検討では、朝鮮時代前中期頃に貝種の交替や文様作成技術の変化が生じたらしきことなどを検討した。また南蛮漆器書見台を中心に調査分析を行い、未だ定見の無い南蛮漆器の編年や実年代検討に一つの見通しを提示した。
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