研究課題/領域番号 |
24520131
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
鈴木 幸人 北海道大学, 文学研究科, 准教授 (30374169)
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キーワード | 天神信仰 / 在地縁起 / 縁起絵 / 松浦武四郎 / 綱敷天神 |
研究概要 |
今年度は、「天神在地縁起」に関する資料、図像収集のために、おもに作品調査、資料収集を行った。実地調査は、関西方面、九州・山口方面、東京方面、あわせて6回行った。主な成果と進捗状況を以下に記す。 (1)松浦武四郎の天神信仰、とくに「天神双六」の分析考察:昨年度に引き続生き、幕末の文人・松浦武四郎の制作した「聖跡二十五社巡拝双六」(明治19年)について、武四郎著の紀行文の読解にもとづき、その成立事情や意図について考察を試みた。その成果は、近世の各種の双六、他の天神双六などとの比較考察もくわえて、美学会東部会において、「松浦武四郎と天神在地縁起 ―「聖跡二十五霊社順拝雙六」をめぐって」(2014年9月28日、北海道大学)として発表した。 (2)松崎天神縁起絵巻の再検討:昨年度に引き続き、山口県防府天満宮所蔵の重要文化財「松崎天神縁起絵巻」の再検討を試みる研究会に参画した。天神在地縁起の最古例として知られる同絵巻であるが、近年の中世絵巻研究の成果を踏まえて位置づけの再検討の必要があるからである。松崎天神縁起研究会(平成26年2月15日、防府天満宮)において、研究成果として、天神在地縁起の諸相、天神画像の諸相について、「天神在地縁起の諸問題」として、口頭発表を行った。 (3)杉谷神社本天神縁起絵巻について:杉谷神社(三重県名張市)伝来の北野天神縁起絵巻は地方伝来の縁起絵巻として重要な作例であるが、『三重県史』(別編美術工芸)にその図様の特色や奥書、現状について解説を執筆した。 (4)古典芸能関係資料の収集:天神信仰に関係する古典芸能演目(菅原伝授手習鑑他)に関連する書籍、映像資料(DVD、VHSビデオ)の収集を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画に照らしておおむね順調に進捗している(①、②)が、以下の点で若干遅れが生じている(③)。 ①調査データの収集と再構築:天神在地縁起にかかわる書籍、図版の収集、おいびこれまでの調査で収集した資料などのデジタルデータ化、分析整理は順調に進捗している。 ②松浦武四郎の天神信仰に関する資料の収集調査:とくに松浦武四郎関係の資料調査、天神双六に関する調査は大きな進捗を見た。 ただし、これに関連して、天神信仰に関する古典芸能資料の収集、調査作業を重視せざるを得なくなったため、③懸案の近世版本類の翻刻注釈作業に遅れが生じていることは否めない。次年度はこの点を優先して研究を進めたい。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の実績を踏まえつつ、以下の点を中心に天神在地縁起の研究を進める。 ①近世版本の翻刻注釈作業:とくに「絵本菅原實記」の調査分析、および翻刻について努力を払いたい。 ②(①にも関連するが)古典芸能関係の資料収集を受けて、演劇、芸能における天神在地縁起の様相を調査分析したい ③松浦武四郎の天神信仰:ひきつづいて、松浦武四郎の天神信仰について、①、②の内容とも関連して、在地縁起および古典芸能に描かれた道真イメージや天満宮巡拝の具体的なあり方を武四郎がどのように受け止めていたのかについても検討していきたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度の未使用額(62,315円)は、平成25年度の旅費であったが、その支払いが平成26年4月(次年度)になったため発生したものである。 上記の理由により、次年度の使用ではない。
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