研究課題/領域番号 |
24520134
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研究機関 | 秋田大学 |
研究代表者 |
山本 建郎 秋田大学, その他部局等, 名誉教授 (30006572)
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研究分担者 |
高木 酉子 朝日大学, 歯学部, その他 (20624399)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ハルモニア / トノス / メセー / パラメセー / トリテー |
研究実績の概要 |
平成26年度は、前半の大部分を25年度に残した課題の完成に追われて、初めに予定したニコマコスの『エンキリディオン(ハルモニア論提要)』に着手したのは、7月に入ってからであった 7月以降は順調に翻訳作成に専念してきたが、何分にも文章が複雑で難解なので進度は思わしくなく、訳読が終わったのは10月に入ってからとなってしまった。以後は、内容に関して、これまでに了解した事項に合わせて検討して、ニコマコスの楽理の特徴を理解した。しかし、それを1つの理論の一環に位置付けるまでには至らず、その完成は27年度に持ち越された。 ニコマコスの当書は短編ではあるが、そこ最初期の音階構造の成立過程に決定的に重要な事実が示されているので、一つの山を越したつもりである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当研究課題の最終目標は、ヨーロッパ中世最初期のボエティウスの『音楽論』全五巻の解説付きの翻訳とそれに基づく古代ギリシアの音階理論(ハルモニア論)の論理的にして歴史的な解明であるが、ボエティウスの当書は古代ギリシアの楽理の克明な紹介であるので、本人が扱っているギリシア語文献の解読がまずなされなければならない。筆者は、先に、古代ギリシア楽理の第一人者であるアリストクセノスの『ハルモニア原論』に関する研究書を当会の助成金の下に上梓し、更に当資金の補助の下に、プトレマイオスの『ハルモニア論』の解読に進み、その訳注書を京都大学出版会から刊行したが、今期の課題はそれに続く幾人かの楽理家の作品の注釈と解説付きの翻訳を完成することであった。 今季はまず最初の24年度と25年度の2年間にわたり、プトレマイオスに続くアリステイデス・コインテリアノスの『音楽論』全三巻の解読に充てたが、これが予想外に難航し、26年度に食い込み、A5版168頁の書物として刊行できたのは26年度の半ば近くになっていた。 26年度に予定していたのは先に別記したニコマコスの『エンキリディオン』であるが、これも予想以上に難航し、27年度に食い込んでしまい、いまだ報告書の完成にはいたっていない(ただ今印刷中)。27年度はあと小品をふたつ解読したうえで、いよいよ目標のボエティウスに取り掛かるつもりである。
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今後の研究の推進方策 |
ローマ中期から末期にかけてはかなり多くの知者が音階論について発言している。あと二人ほど(クレイネイデス、アリアノス)の音階論の小品を同様に読解して、報告書にまとめる。そのうえで、ボエティウスの『音楽論』に取り掛かる。ボエティウスは哲学史に残る大物であるので、その哲学的な背景からも、総合的に検討する。ボエティウスの解説付きの翻訳も本邦初訳になるので、出版が期待されている。
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次年度使用額が生じた理由 |
イタリアのレッチェ市で行われた古代ギリシア音楽にかんする学術会議への参加を、次年度以降により充実した発表をするために見送ったため、予定した旅費と参加費用等が不要となった。
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次年度使用額の使用計画 |
27年度に古代ギリシア音楽にかんする学術会議へ参加するため旅費として使用する。
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