研究課題/領域番号 |
24520135
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
阿部 宏慈 山形大学, 人文学部, 教授 (10167934)
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研究分担者 |
中村 唯史 山形大学, 人文学部, 教授 (20250962)
清塚 邦彦 山形大学, 人文学部, 教授 (40292396)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 表象 / メディア / ドキュメンタリー映画 / 表象理論 / フランス / ロシア |
研究概要 |
研究初年度にあたる平成24年度は、特に研究資料を収集するとともに、全体の理論的探究の方向づけをおこなうことを目的とした。阿部は全体の研究を統括し、「メディア的身体」という問題提起のもとに、研究分担者である清塚邦彦、中村唯史とともに、複数回の研究会を開催して、検討をおこなった。またライプツィヒ(ドイツ)の映画祭において調査をおこなった。清塚邦彦は分析美学の立場から、現代表象メディアにおける身体の問題の理論的な問題点を検討した。さらに中村唯史は、ロシア・フォルマリズムの史的定位の再検討を試み、その過程でフォルマリストたちの思考が、映画やグラムフォンなど同時代の視聴覚メディアの発達に対する反応としての側面を強く持っていたことを指摘した。 研究会では、まず全体の研究方針と期間内における研究の方法、共同研究の計画について検討した。六月には人文学部の教員であり映画の研究をおこなっている大久保清朗氏とともに、アニメーション研究家の藤津亮太氏を招いてアニメーション映画における「心と体の距離」というタイトルで、講演と討論をおこなった。特に現代のメディアにおける身体的なるものと心的なるものの表象の問題を理論的に探究した。さらに、九月には清塚邦彦の主催で哲学研究者の森功次氏を招き、ジャン=ポール・サルトルや分析哲学と美学的探究を基盤とした身体論の新たな理論的展開の可能性について共同討議をおこなった。最後に十二月には、ロシア・フォルマリズムの研究家である八木尚人氏を招き、ロシア・フォルマリズムや、20世紀初頭ロシアの思想や理論と当時のメディア環境との関係について論じてもらい、それをもとに共同討議をおこなった。 これらのシンポジウムや共同討議などを通じて、メディア的身体という概念の浸透を図り、同時にその提起する問題の幅や射程距離を確認することにより、第二年度以降の研究のための重要な布石となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の計画では、三回の研究会を開催し、それぞれに研究分担者が研究状況を報告し討論をおこなう筈であったが、それぞれに最新の研究成果に触れるために、若手の研究者をゲストとして招いて、情報交換をおこないながら四回の研究会シンポジウム等をおこなうことができたため、当初尾予定以上の進展を見たと判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
第二年度においては、本年度以上に、一層具体的な視覚表象の事例調査と分析に進む。 研究代表者の阿部は、山形国際ドキュメンタリー映画祭に参加するだけでなく、フランスなどの映画祭への参加と、映画作家、批評家との討議により最新の映像技術と視覚表象の現状をさぐる予定である。すでに24年度にはライプツィヒ(ドイツ)の映画祭に招かれ、研究者や批評家との討論を重ねたが、次年度はさらに山形国際ドキュメンタリー映画祭のライブラリー所蔵の作品などの調査も加えて、研究を進展する。清塚邦彦はさらに身体/機械論の現代的な展開を探究する。また、中村唯史は前年度におこなっていたマンガ論の研究を継続するとともに、ロシア・フォルマリズムの理論的研究を発展させる。 今後も、初年度において大いに有効であった若手研究者、あるいは実作者や批評家との対話による現代メディアの現状に関する調査研究および討議を継続して行きたい。そのためには、24年度同様に、研究会へのゲストの招聘、さらには講演会などの企画をおこないたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
阿部はヨーロッパを中心としたドキュメンタリー映画の現状の調査のために、特にフランスの映画祭への参加を予定している。最終的な参加映画祭はマルセイユ国際ドキュメンタリー映画祭もしくはパリ シネマ・デュ.レエルを予定している。いずれかの映画祭に参加し、昨年度のライプツィヒ(ドイツ)におけると同様に、現代的なドキュメンタリー映画における身体の表象の問題を検討する。そのために、海外渡航のための旅費滞在費を計上する。 清塚邦彦にあっては、特に現代的な哲学研究の状況を調査し、他大学研究者と情報交換をするなどの目的で研究会への参加のための旅費を計上する。 中村唯史にあっても、東京および札幌(北海道大学スラブ研究所等)における他大学研究者と情報交換をするなどの目的で研究会への参加のための旅費を計上する。 また、研究系買う所にもあるように、他大学研究者を招待しての研究会を実施する予定である。そのために、特に東京などからの研究者の招聘旅費および謝金を計上する。
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