研究課題/領域番号 |
24520139
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
長谷川 慎 静岡大学, 教育学部, 助教 (00466971)
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キーワード | 三味線 / 地歌 / 野川流 / 水張り / 復原 / 古楽器 |
研究概要 |
研究2年目の本年度の研究は以下の4点に集約される。①野川流地歌三味線の特徴を断定するため同時期の古楽器を調査、②野川流地歌三味線の皮張りについて「水張り」を用いて楽器製作者に復原作業を依頼しかつて行われていた皮張りの検証を行い楽器製作者に発展的な研究のための示唆を得た、③復原した三味線を地歌実演家に演奏してもらい評価を受けた、④4都市(東京・福島・静岡・広島)での成果発表演奏を通じて聴衆にアンケートを実施した、⑤継続して古楽器(三味線・駒・撥)の収集とSP盤等に残る野川流地歌三味線の演奏録音の収集とデジタルアーカイブを行った。 ④では、「第6回男で地唄全国公演」において野川流地歌演奏家の指導のもと「野川流三味線組歌中組《早舟》」の演奏に取り組んだ。4度にわたる公演によりそれぞれの会ごとに音色・演奏法の点検を行うことができた。聴衆のほとんどは野川流地歌三味線の存在はもとより、地歌三味線に種類があったことを知らない地歌愛好者も多くあり、広い地域と世代に周知をすることができた。アンケートの自由記述の中には「菊原琴治のような音をまねたいと、高さの高い駒とか試してみたが、やっぱり違い、このような試みが企画されたことに感謝。是非野川流三味線が復活し普及することを期待する」「倍音も豊かで民族楽器のようなプリミティブさを感じた。九州三味線や長唄三味線よりもノイジーに聞こえる」などの声があった。 ⑤では、菊原琴治と菊県琴松らの演奏音源の充実した収集ができ、デジタルアーカイブ化をおこなった。古楽器の収集についても多くの野川流地歌三味線を収集することができた。 雑誌『邦楽ジャーナル』誌の取材を受け平成25年11月号において野川流地歌三味線の存在を発信・研究内容の報告を行った。成果発表をした演奏会では聴衆に対しレクチャーを行うとともに図版入り資料を配布した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究の主たる目的は、1)楽器としてみた野川流の地歌三味線についての現物調査、2)当時の皮張りを用いての楽器の復原を通じて当時の音色の再現としている。当初は3年目に楽器の復原を行い成果発表演奏を行う予定でいたが、順調に楽器の復原がすすみ、1年前倒しで本年度に実施をすることができた。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度となる本年は、①野川流地歌の伝承者に復原楽器の演奏と検証を依頼、②野川流地歌伝承者でSP盤に当時の録音を残している菊原琴治使用の三味線についての調査の実施、③博物館等に残る当時の野川流地歌演奏者使用の三味線の調査を行い、調査の結果を報告書としてまとめ、図版を取り入れた野川流地歌三味線についてのアーカイブ資料を作成する。
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