研究課題/領域番号 |
24520143
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 東京芸術大学 |
研究代表者 |
出口 丈人 東京芸術大学, 大学院映像研究科, 講師 (50463956)
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研究分担者 |
桐山 孝司 東京芸術大学, 大学院映像研究科, 教授 (10234402)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | ショット統計 / 大ヒット映画 / 日本映画 / アメリカ映画 / フランス映画 |
研究概要 |
24年度はデータ収集の範囲を広げ、年間最大ヒット映画のデータベースを完成させることが当面の目標であった。早速、大ヒット作品の調査範囲を広げ、収拾したデータの処理を進めた。 その結果、作品のデータをナショナル・フィルム時代と70年代以降で比較すると、日・米・仏各国で、急にショットが短くなることが明らかになった。 またショットの長さをフレーム数別に集計してみると、均一な分布にならず、多く使われるフレーム数の間に、あまり使われないフレーム数がところどころ現れ、凹凸があることが分かった。 反面、データの処理を進める途中で、一つの問題が起きた。1990年代以降の作品を何本か処理したところ、ショットのつなぎにコンピューター処理がされているものがいくつか見つかったのである。画面の中でのCG合成は想定していたことであったが、カメラがある光景を移動で捉えながらいつの間にか同じ場所の別の時代の光景に変わっていくようなショットがあり、従来のフィルム撮影・編集と違い、ショットの区切りを指定できないばかりか、区別をすること自体が無意味であるような例が複数の作品で見られた。最初は、一つ一つの判別を議論していたが、あまりにもケースが多様なので、調査範囲を限定するほうが現実的であるという結論を出さなければならなくなった。当初は、範囲を可能な限り2010年くらいまでと想定していたが、1980年から1985年頃までで、一旦、線を引くことにした(最終的な線引きは次年度)。対象が数的に絞り込まれる結果になったので、大ヒット映画のショットの長さのデータは処理をほぼ完了した。 その他25年度の処理テーマのための予備的調査を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画では、2010年くらいまでの作品のうち約半数を処理し終える程度が現実的と考えていたが、想定していた調査範囲を、1980年あるいは1985年頃までに限定しなければならなくなり、対象が数的に絞り込まれる結果になったので、大ヒット映画のショットの長さのデータは処理をほぼ完了した。 対象が限定された結果ではあるが、そのため他の道を具体的に検討する時間的余裕が生まれ、今後の長さ以外の情報の処理について徹底した議論を行うことができた。それにより、映像処理技術を、より目的に特化したものに改良することが可能となった。
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今後の研究の推進方策 |
・昨年度の持ち越し 1、研究対象の範囲を一旦、線を引くことにした、1980年から1985年頃までのどの範囲するかを決める。2、ショットを長さにより集計し、そこに現われた数的凹凸の特性を利用し、いくつかの群に分けようと試行錯誤したが、どのような分け方にするか結論を出し、それに基づく次の段階のデータ処理を行う。 ・今年度 収集されたデータの数理的規則性、特徴的パタンを探し、解読し、長さ以外の情報(例えばサイズ、オプチカルなど)を処理していくことを主眼とする。またカメラの移動をどのようにデータ化するかが、直近の課題であり、すでに議論を重ねている。また、今回の研究でも、大ヒット作品と対比させる目的で、各年度を代表する作品を分析対象として念頭においていたが、アメリカでの指標としたニューヨーク映画批評家協会賞がイギリス映画に与えられる例が多くなったこと、フランスでのそれに当たる賞の性格が日米とは著しく性格が違うことから、芸術的な作品については、日、米、仏から一人ずつ特定の作家を取り上げてさらに広範囲に調査を行うよう、方針を修正する。
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次年度の研究費の使用計画 |
1、アメリカとフランスの作家を各一人選び全作品のソフトをそろえる。(日本の作家分は、すでにソフト収集を完了)。 2、データ処理に増大にともない、ハードディスク、コンピュータを増やす。 3、データを処理するための作業にアルバイトを雇い、作業料を払う。
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