研究課題/領域番号 |
24520143
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研究機関 | 東京藝術大学 |
研究代表者 |
出口 丈人 東京藝術大学, 大学院映像研究科, 講師 (50463956)
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研究分担者 |
桐山 孝司 東京藝術大学, 大学院映像研究科, 教授 (10234402)
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キーワード | ショット分析 / ショットのサイズ / アメリカ映画 / 日本映画 / フランス映画 |
研究概要 |
課題となる作業のうち、作品をショット単位に分割処理したデータにサイズ(クロースアップなど被写体の大きさ)による情報を加えることに着手した。この検出・判定は自動化できないので、実例判定を積み重ね原則を作ることにした。これまでも判定は観察者の解釈により別れることがあり、個々の事例ごとに協議をして結論を出していた。これでは手分けすると同一の結果が得られない虞れがある。そこで多様な時期の各国映画を抽出し、判定の基準を確定しようとした。しかし作業を始めると、表現の幅が想定以上に広く、分析のたびに基準の修正・補足を迫られた。観察者の解釈の違いも想定以上に大きいことが分った。そこで作業の専従者を決め、それを全員がチェックして、基準作りの一本化を進めた。結果的に、この作業にほぼ一年を要した。基準はほぼ固まったが、まだ新たに養成した作業員が同じ基準で判定し結果が得られるかどうか検証するところまではいかなかった。ショットのサイズによる情報を加えて、新たな角度から統計処理をし特性を分析することはできた。 この作業と並行して、平成24年度に、「芸術的な作品については、日、米、仏から一人ずつ特定の作家を取り上げてさらに広範囲に調査を行うよう、方針を修正したのに従い、日本、アメリカ、フランスから長く活躍した映画監督として、それぞれ黒澤明、ジョン・ヒューストンを選び、これまでの作業同様、データ処理を進めている(フランスの監督も今年決定する予定)。ベストワン作品のデータと対照させることで、作品の特徴に新たな光を当てることができる。 これらを踏まえて、ヒット作品を主体とした量的分析と、作家単位の質的分析という大きな方向が固まった。 また、連続した二つのショットの関係など、データ相互の関連を、サンプルによって検証し、何がどこまで明らかになるか、どの程度有効かという仮説作りとその評価を続けた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
サイズ判定のための基本作業に手間取ったので、処理本数を増やすことができなかったが、基準の確立を差し置いて先に進むわけにはいかない。不可欠の足踏みである。 昨年問題となった作品を対象とする範囲は、大ヒット作品やベストワン作品は1980年で一応の線を引き、監督単位で見る時には最後の作品までを扱うことを作業仮説とした。 また当初想定していなかった以下の問題は本年度で解決された。もともとフィルムで撮られた映画をデジタルデータを使って計測する際には、テレシネの過程で生じる上映時間の変化に留意する必要がある。NTSCの場合は上映時間に違いはないが、PALの場合には、約4%再生時間が短くなる。PAL版のDVDを使って計測する場合には、データを25/24倍することで本来のショットの持続時間になるように補正しなければならず、データの補正という作業は完了した。 データ相互の関連を検証し、何がどこまで明らかになるか、どの程度有効か評価する作業は、方針ができつつあるので、データ収集とともに加速する条件は整った。
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今後の研究の推進方策 |
3人の作家のデータを積み上げ、作家的特質の分析を深める。この段階で作品の内容と統計的結果を対応させる。 ただこの作業の場合もショットのデータ処理は基本であり、ショットの量的データをヒット作、作家の作品ともに積み上げることで、回帰分析を駆使した比較の可能な軸を複数設定し総合的見解を掘り下げ、総合する。会話のシーンを抽出し、特性を分析することを一つの視点として準備している。
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次年度の研究費の使用計画 |
サイズの基準作りに追われ、ショットのデータ処理という点では数を増やすことができなかった。そのため予算を残す結果になった。 今年度は残っているかぎり人件費に投入して、前期までに処理数を増やし、データ総合時の統計的確度を高め、総合的知見に高める。
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