研究課題/領域番号 |
24520148
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
井山 弘幸 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 教授 (70168532)
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キーワード | 笑芸 / 落語 / 発見的創造性 / テキスト分析 |
研究概要 |
平成25年度は記録媒体を落語のテキスト分析。とりわけ、六代目三遊亭円生の落語(京須偕光監修『円生百席』(CBSソニー)の枕部分と本ネタとの関係を中心に、原テキストがどのように改変・改良され、アップデートなものに変換されるかを研究した。同時に、東京新宿の末廣亭および浅草演芸場を中心に寄席落語の枕とネタとの関係をライブ取材して記録した。前者の円生の場合はスタジオ録音であるため観客不在であり、寄席とは大きく環境が異なっている。ライブの偶然性がどのようにテキスト変換に用いられるかを量るには両者の対照は格好の素材を提供してくれる。前者については、年度内で完結せず次年度に持ち越し継続しており、後者についても同様である。 一般の笑芸とりわけ漫才・コントに関しては、25年度をもって放送終了となった長寿ネタ番組「オンバト+」(旧爆笑オンエアバトル)は、収録時間四分という短編作品を、15年間放映続けてきた貴重な番組であるが、完結したことにより、笑いの構造の継時的変化を分析するには好個の素材であるため、25年度末にINDEXの作成を始めた。この作業は26年度にも継続する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
笑芸は活字テキストの場合は、通常の文献研究の手法で着実に研究を進捗させることができるが、口承テキスト(寄席やDVD)の場合は、一度、筆写テキストを作成する必要があるため、鑑賞した時間に匹敵するテキスト作成の時間を要する。明治期の落語の場合は筆写本が流布したし、昨今の噺家は自ら編集したネタ本を書く習慣があるため(談志、志ん朝、円生など。米朝はCDに自ら執筆したテキストを添付している)、なるべく多くのテキストを読むために利用しているが、いずれにしてもかなりの時間を要し、当初の予想を上回る日数が必要となっている。
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今後の研究の推進方策 |
テキスト作成の作業を加速するために映像資料を活字化する作業の一部を協力者(謝金を利用)に委ねる必要を感じている。さらに笑い学会関東支部の研究会を通じて、基礎的なテキストの共有・交換をはかり、分析資料の充実化を考えたい。笑いの評価に関わる部分はまだ緒についたばかりだけれど、ライブ会場での笑いのスペクトル(定性的な記述でしかないが)を記録するよう心がけたい。3年目なので期間の半ばでテキスト作成をほぼ終えて、最終的な分析、仮説の提起、そして検証という作業に入っていきたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
本研究はリアルタイムで行なわれる笑芸やテレビ放映される作品の分析であるため、つねに新鮮な素材を収集記録する必要がある。26年度に予定している出張費は寄席・演芸場での作品取材に用いられる。これとは反対に記録資料はすでに購入したCD・DVDは引き続き26年度も利用できるので、差額が用いられるのは、これらとは重複しないものの新規購入に対してである。 寄席・演芸場の範囲を前年度よりは広くとり、上野広小路亭・黒門亭・日本橋広小路亭・国立演芸場の定席を取材し、笑芸データを拡充する予定である。
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