研究課題/領域番号 |
24520148
|
研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
井山 弘幸 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 教授 (70168532)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 笑芸 / 落語 / 発見的創造性 / テキスト分析 |
研究実績の概要 |
平成26年度は前年に引き続き記録媒体による「落語」の分析。立川談志の「談志百席」を中心に導入部分である「枕」からどのように本ネタ(噺)へと移行するか。その移行形式の分類・系統化をはかった。また新宿末廣や池袋演芸場のライブでの「枕」と本ネタとの関係について記録をとった。例えば権太楼は「鰍沢」の前に紫綬褒章受賞のときの様子を語っていて、これは「時事問題」「ニュース」でありながら「情報の漏洩」という点で本ネタと通底している。おそらく別の機会では繰り返さない枕であるが、「鰍沢」で「お熊」の正体が露顕する経緯を権太楼を重視しているので、それ相当の枕が用意されることが予測される。このように同一の噺に対する枕の異同も研究の重要なテーマである。 一般の笑芸の構造分析もおこなった。とくに26年度は東京03のコントをDVDからシナリオ起こしし、すでに研究成果となった「笑いの12のイディオム」のなかの「針小棒大」が洗練されたかたちで頻出することを確認した。コントの場合は漫才と較べて使用するイディオムが限られることもまたこのたび確認することとなった。落語の枕とネタの関係、コント・漫才の構造分析は27年度も継続する。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
テキスト作成の作業とくに映像資料のシナリオ化は、結局自分でおこなっているため、十分の量がまだ集まっているとはいえない。すでに刊行されているものも含めてデータベースの充実化をさらにはかりたい。昨年度の計画にあった「仮説の提起」は一部のアーティスト(東京03)についてのみ達成できたが、さらなる検討が必要となっている。
|
今後の研究の推進方策 |
笑い学会の新潟支部における「笑い学研究会」を昨年度から活性化し、発表の場としてきたが、「仮説の提起」と「検証」の作業を研究会を通じて充実化していきたい。とくに発見的創造性のテーマについては、本来の専門である科学論の近年の成果との密接な関連について上述の「仮説の提起」に絡ませていきたい。とくにケストラーの思考のマトリックス説を笑芸に適用できる形態に変換することを考えている。換言するならば、「笑い」をつくる思考と「発見」をなす創造性とのあいだにはきわめて密接な構造的類似性がある、という点である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
年度末に注文したDVDの一部が三月末までに入荷しなかったために生じた差額です。具体的にはシソンヌとバンビーノのライブ作品です。四月に入荷しましたので、翌年度分のなかで処理します。
|
次年度使用額の使用計画 |
三年間であらかた基本的な資料とくに映像資料は揃えることができた。映像資料は今後刊行される新しいものに絞られる。また寄席・演芸場での笑芸データ収集の作業は旅費を使って今後も継続してゆく予定である。できれば年末には収集したデータを分析した報告書を作成したい。
|