本研究は、ゴードン・マッタ=クラーク作品に見られる自然観を同時代の美術と思潮に照らして明らかにし、現代の視点から検討を加えることを目的とする。本年度の計画は、素描作品の調査と分析、アースアートとの関係の考察、1970年代の思潮との関係に関する考察であった。 昨年度に引き続き、アースアートの代表的な作家の一人であるロバート・スミッソンの研究状況を概観するとともに、マッタ=クラークの作品との比較を試みた。12月にはモントリオールのマッタ=クラーク・アーカイヴ、「アースアート」展が行われたコーネル大学のアーカイヴ、スミッソン・ペーパーズが所蔵されるスミソニアン研究所アメリカ美術アーカイヴにおいて調査を行い、アースアートとマッタ=クラークの関係を明らかにした。 また、1970年代の思潮、とりわけカウンター・カルチャーにおける錬金術の位置づけという昨年度に得た主題については、今年度、ジャクソン・リアーズやマイケル・リージャといった歴史家や美術史家の方法を検討したことにより、今後の分析の足掛かりを得ることができた。 最終年度に予定した展示による成果の発表は、先延ばしになるとともに、本研究課題を出発点としたより大きな規模での展覧会開催に向けて準備が始まった。出品候補作品として、残されたものを具に調査する過程で新たな発見があり、また調査を通じて美術館や遺族、各国研究者等の関係者との連携も深化した。
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