研究実績の概要 |
研究最終年度である平成26年は、音楽の構造を確率系としてとらえ、それの分析に数理統計解析手法を全面的に援用する実践を行った。つまり音楽構造及び様々な要素の水平/垂直側面双方を同時に多変量変数として扱う方法論である。具体的には、分析不可能とされてきたアルバン・ベルクの『管弦楽のための3つの小品』から最も複雑な構造を持つ「行進曲」op.6を対象に構造方程式モデリングとパス解析による分析を実施した。結果として、エクリチュールや表現主義的音響側面によって隠されていた(誤解されていたと言っても過言ではない)、より単純な構造的側面を数理解析によって浮彫りすることに成功した。なお、この実施ではDerrik Puffettによる既存のアナリーゼ手法を踏襲した研究“Berg, Mahler and the Three Orchestral Pieces Po.6”;“The Cambridge Companion to Berg”~Part 2: pp.111-144,Cambridge University Press(1997)を基に、ベルクの自筆譜と出版譜の差異の検証等、音楽学的予備調査を行った。本分析結果は音楽音響芸術研究会2014年度研究大会にて口頭発表した。 また、当初の目標通り、構造方程式モデリングによる数理解析手法を逆のベクトル、つまり自作へ援用し新たな管弦楽作品を制作した。この作品は平成27年度4月にシアターオーケストラトーキョーの協力のもと、東京にて初演された。
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