〈小説と映画のあいだ〉という近年取り組んでいる大きな課題のうち、(1)日本を代表する小説家川端康成と映画監督小津安二郎のふたりに焦点をあわせた比較研究、および(2)川端康成の小説とこれを原作とした映画作品の芸術間翻訳の研究を行った。 成果として執筆した論文二本を専門誌(査読あり)に掲載し、講演を二回行った。 (1)については、小説と映画というジャンルの違いを超えて、両芸術家の作品にどのような共通性が見いだせるか、またそれは日本文化とどのように関わりがあるのか否かについて検証した。二回の講演会のうち、2014年9月17日、18日にフランス・パリで開催された「川端康成21世紀再読─モダニズム、ジャポニスム、神話を越えて」(日本近代文学会、国際交流基金主催)というシンポジウムに参加し、「川端康成「山の音」と小津安二郎監督作品の詩学における〈日本〉」(仏題:Le Japon poetique- Le Grondement de la montagne et les films d'Ozu )というテーマでの発表(フランス語)が最も意義深い成果であったと考えている。海外6カ国の川端をはじめとする日本文学、文化研究者たちとこのシンポジウムにおいて交流する機会を得、日本映画にも造詣の深い海外研究者たちと意見を交換することができた。(このシンポジウムでの発表は現在日本をはじめとする各国で刊行計画が進められている。) (2)については、川端康成「美しさと哀しみと」を研究対象とし、主に詩学の視点から小説と映画の文法、技法の差異を検証し、講演会(茨城市立川端康成文学館主催)で発表したのち、これを論文として書き上げ、専門誌に掲載した。
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