研究課題/領域番号 |
24520152
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
藤木 秀朗 名古屋大学, 文学研究科, 教授 (90311711)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 映画 / 日本近現代史 / 社会史 / 観客 / 思想史 / メディア |
研究概要 |
本プロジェクトは「民衆」「大衆」「市民」「国民」「皇民」といった言葉で言い表される社会主体との関係で映画観客を歴史的に考察することを目的としている。当年度はまず5月に、「大衆」の観点から論じた論文を共著書『「戦後」映画論―1950年代を読む』(青弓社)に発表した。そして後半は、「市民」との関係に調査・分析の力点を移し、12月に上海師範大学で行われた国際学会(International Conference of Intercultural Communication)と、3月にシカゴで開催された映画メディア学会(Society for Cinema and Media Studies)にて口頭発表を行った。また、これに関連するテーマとして、10月に熊本で開かれた東アジア市民共生映画祭に参加し、そのレビューを学術雑誌『JunCture 超域的日本研究』に掲載した。その他、観客というテーマに直結していないものの、ある程度関連のあるものとして、6月にソウル大学で開かれた国際シンポジウム(International Symposium: Women in Academia)で報告、9月にグラスゴー大学で開かれたシンポジウム(Symposium on Japanese Cinema of the 1960s)でコメント、2月に名古屋大学で行った国際シンポジウム(東アジア関係学の構想)で報告を行った。加えて、関連のある研究成果として、単著書Making Personas: Transnational Film Stardom in Modern Japan (Harvard University Asia Center)と、共著書Oxford Handbook on Japanese Cinema (Oxford University Press)が来年度刊行される予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画の順番を変更したが、おおむね順調に進展している。すなわち、当初は、平成24年度に「国民」「皇民」に関する言説を扱い、平成25年度に「市民」を扱う予定にしていたが、この順番を入れ替えた。その大きな理由は、上海師範大学から国際学会を開くにあたって、現代のテーマについて発表を依頼されたからである。したがって、当年度の後半から、「市民」「シティズンシップ」をキーワードに、市民の映画上映活動、そこで上映されることの多いドキュメンタリー映画、さらには「市民」を冠した映画祭の調査を始めた。そしてその経過報告を、上海師範大学の国際学会と映画メディア学会で発表した。その意味で、研究は着実に進展している。しかし、映画祭についてのレビューを発表したものの、論文にまとめあげるまでには至っていないので、その点で計画以上に進んでいるとは言えない。とはいえ、来年度に成果が発表できる段階には来ていると言える。
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今後の研究の推進方策 |
「市民」と映画観客に関する論考を8月までに完成させ、名古屋大学文学部の紀要または『JunCture 超域的日本研究』などの雑誌に投稿する。また、このテーマに関連するものとして、東京大学の研究者から誘いを受けている共著書Media Convergence in Japanの締め切り(2013年12月31日)に合わせて英語論文を完成させる。一方、9月からは「国民」と「皇民」の問題に移り、1930年代から1950年代の一般雑誌、新聞、映画雑誌、その他の文献(たとえば、『日本映画』『映画旬報』『帝国教育』『映画年鑑』『映画週報』『キネマ旬報』『朝日新聞外地版』『台湾日日新報』『藝文』『満州浪漫』『朝鮮及満州』『朝鮮公論』など)を調査し、1月には一つの論考に仕上げる。そして、「民衆」と「大衆」をテーマにした昨年度からの研究成果と合わせて、一冊の書籍にまとめることに取りかかる。この企画の書籍化を勧めてくれている名古屋大学出版会に、2014年春までに原稿が提出できるようにしたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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