研究課題/領域番号 |
24520152
|
研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
藤木 秀朗 名古屋大学, 文学研究科, 教授 (90311711)
|
キーワード | 映画 / 近現代日本 / 観客 / 市民 / 民衆 / メディア |
研究概要 |
本研究は、映画観客像の変容を歴史的・社会的文脈に照らし合わせながら解明することを目的としている。より具体的には、(1)1920年代によく使用された「民衆」概念、(2)1930年代から50年代の「大衆」、(3)1930年代から40年代の「国民」と「皇民」、そして(4)1960年代から現在に至る「市民」概念との関連で映画観客がどのような社会的意味を持ち合わせたのかを分析することを目標としてきた。当該年度は主に(4)に力を入れてきた。その成果として、『JunCture 超域的日本文化研究』第5号(2014年3月刊行)と、Jason KarlinとPatrick Galbraithによる編集書Media Convergence in Japan(近刊)に投稿した。また、(1)について書いた論文がDaisuke Miyao編集のOxford Handbook of Japanese Cinema (Oxford University Press, January 2014)に掲載された。さらに、トルコ・アンカラの中東工科大学で開催された国際学会Asian Political and International Studies Associationで口頭発表を行った他、関連する著書Making Personas: Transnational Film Stardom in Modern Japan (Harvard University Asian Center)を2013年10月に刊行した。こうした発表を重ねることで、細部の分析を深めるとともに、一冊の本にまとめる見通しが出てきた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の計画としては、「市民」の問題を当該年度の前半までに終了し、「国民」「皇民」の問題に取り組む予定だったが、前者のテーマに関して、上記の論集Media Convergence in Japanへの投稿依頼が2014年3月末日締切で来たり、2014年4月1日に米国Bryn Mawr Collageでの講演を依頼されたりしたことで、後者の問題に取りかかるのが多少遅くなってしまった。とはいえ、こうした機会をいただくことで「市民」の問題について考察を深めることができたのも確かである。
|
今後の研究の推進方策 |
「皇民」「国民」の問題について早期に取り組みたい。すでに昨年度調査を開始しているが、それをさらに徹底して進める。また、観客論全般についての先行研究を整理し、自分の研究との差異をさらに見極めることで、書籍の序章を書く準備を行いたい。一方、ウォッリク大学から招聘されている5月の「市民」についての講演を行う他、7月2日にテンペレ(フィンランド)で開催される文化研究の学会でもこのテーマについて研究発表を行う。
|