現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の独創性と意義は、①資料的な空白を埋める ②一九二〇年代の音楽を第一次世界大戦から捉えなおす ③社会的危機の中の音楽のありようを問い直す の三点にある。 1.第一次世界大戦中の慈善演奏会の氾濫については、パウル・ベッカーやグイド・アドラーやユリウス・コルンゴルトといった、同時代の著名な音楽批評家/音楽学者によって、しばしば言及されている。しかし慈善演奏会の実態についての歴史研究はまだない。戦中オーストリアの音楽プロパガンダを扱ったAlexander Perterer, Aus ernster Zeit, Wien 1991.や、二〇世紀初頭の労働者運動の中の音楽の役割を辿るReinhard Kannonier, Zwischen Beethoven und Eisler. Zur Arbeitermusikbewegung in Ӧsterreich, Wien 1981.の中で、断片的な記述があるのみである。本研究は、音楽史におけるこの「五年の空白(一九一四年~一九一八年)」を埋める、最初の試みである。
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