第一次世界大戦は、上流ブルジョワのアソシエーションのような性格が強かった従来のコンサートのありようを、大きく変化させた。音楽は国民全体の文化的共有財産だという意識が強まり、国家主導によって慈善演奏会が盛んに行なわれるようになって、従来コンサートにほとんど足を運ばなかった労働者階級にまで、交響曲を中心とするコンサート文化の門戸が広く開かれるようになっていくのである。本研究は、こうした社会的危機の中で、音楽受容がいかなる問題に直面し、いかに変貌するかを、第一次世界大戦の慈善演奏会を事例として研究した。
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