研究課題/領域番号 |
24520155
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
上野 正章 大阪大学, 文学研究科, 研究員 (00379215)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 洋楽 / 通信教育 / 独学 / 日本音楽史近現代 / 音楽 / 地方 / 新聞 |
研究概要 |
1.国立国会図書館、民音音楽博物館音楽ライブラリー、神奈川県立図書館等で音楽の独習書を調査した。 2.明治後期発行の『佐賀新聞』、『新潟新聞』、『富山日報』及び、大正期発行分の『鳥取新報』、『山陰日日新聞』と『因伯時報』を調査し、西洋音楽関連記事・広告を収集した。 まず、『新潟新聞』の調査において大きな成果があった。早くも明治30年頃から楽器や蓄音機の広告が新聞に定期的に掲載されたことが判明した。また、地元の資本というよりも十字屋や天賞堂といった東京の楽器店や蓄音機店が積極的に広告を掲載していたことが分かった。さらに、同新聞には定期的に新刊雑誌の広告も掲載されていて、その詳細な広告には音楽関連記事が含まれていることが判明した。新聞読者が新刊雑誌の広告を見てこれを買い求め、記事を読むことによって音楽についての知識を得た可能性がある。 なお、研究において新たな知見の発見があった。『鳥取新報』、『山陰日日新聞』と『因伯時報』の調査によって、大正期に西洋音楽が鳥取及び米子に普及し、またその際にどのような普及経路を辿ったのかということが判明した。地方都市における西洋音楽の普及は日本近代音楽研究で立ち遅れている研究領域である。音楽の独学の研究における重要な研究成果と判断し、大急ぎでまとめて東洋音楽学会全国大会で発表した。 3.楽器・蓄音機等の音楽関連商品の販売カタログを収集している過程で、楽器を演奏している図案の絵葉書も幾らか収集することができた。絵葉書には、1.西洋音楽文化を郵便で伝えるメディアという側面と、2.過去の楽器の奏法に関する重要な歴史資料という側面とがある。当初は調査すべき資料として特に重視していなかったが、随時研究に活用することを視野に入れたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
1.独習書の調査と、地方紙に基づく西洋音楽に関する物と情報の流れの調査はある程度の成果を出すことができたが、全国各地の楽器店の沿革は十分な調査結果が得られなかった。なお、楽器やレコード、蓄音機に関する通信販売カタログも数えるほどしか見つけ出すことができなかった。 2.大正期に発売された大日本家庭音楽会発行の『ヴァイオリン講義録』(全3巻)を使用してヴァイオリンを学習し、その過程を研究する予定を立てていたが、研究に着手することができなかった。また、予定していた幾つかの調査旅行も遂行できなかった。新たな知見の発見があり、これをとりまとめて成果発表することを優先したからである。
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今後の研究の推進方策 |
当初の研究計画の通り、まず、1.全国的な視座から明治・大正期における西洋音楽に関する物と情報の流れを調査する。なお、平成24年度の研究成果を踏まえて、西洋音楽関連の雑誌記事や絵葉書にも注目する。また、2.大正期の独習書を用いてハーモニカを学習し、その過程を記述し、楽器を弾く身体の形成を研究する。3.明治後期の新潟においてどの程度西洋音楽に関する情報が新聞を通じて流布していたのかということに関する研究発表を試みる。 あわせて、平成24年度分の未遂行の研究をすみやかに実施する。1.明治期の山陰地方と明治・大正期の近畿地方に関して、西洋音楽に関する物と情報の流れを調査する。また、2.大正期の独習書を用いてヴァイオリンを学習し、その過程を記述し、楽器を弾く身体の形成を研究する。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初の研究計画の通り平成25年度分予算を使用して研究を遂行する。また合わせて平成24年度未遂行の研究をすみやかに行うために「次年度使用額」を使用する。なお、「次年度使用額」の発生は、予定していた資料の購入ができなかったことによるものと、予定していた調査旅行の未遂行及び、これに関連する複写費の未使用による。 「次年度使用額」は、第一に、山陰地方および近畿地方で文献調査を行うための旅費として使用する。第二に、その際に文献複写を行うための「その他(複写費)」としても使用する。第三に、資料購入費にも使用する。
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