本年は本編と資料編の2冊から成る研究成果報告書を執筆した。本編は5部に分かれ、内容は次の通りである:1.明治期における西洋音楽の独習の学習環境に関する調査報告、2.明治後期から昭和前期にかけて出版されたハーモニカの独習書についての書誌、3.ハーモニカの独習過程を独習書の書き込みに注目して解明する研究の報告、4.声楽家の四家文子の自伝に基づく大正期の楽譜文化に関するエッセイ、5.大日本家庭音楽会のヴァイオリンの通信教育における受講者の学習状況についての調査報告。 また、資料編は音楽の独学に関連する過去の出版物と本論に関連する参考資料であり、復刻を試みたのは次の資料である:『大阪用達合資会社 発売品目録』、『ハーモニカ独まなび』の巻末広告、『楽器カタログ[十字屋楽器店販売品目録]』、『簡易図解 マンドリン独学び』の巻末広告、『日本名物セノオ楽譜 声楽譜目録』、『三木楽器店 音楽書総目録』、『家庭音楽』第115号の巻末広告。何れも日本近代音楽史において重要な資料でありながら、これまで入手困難とされてきた資料である。また、参考資料は書き込みのある『ハーモニカ奏法』宮田東峰の抜粋とエンホニコンの写真である。 ヴァイオリンの練習も試みたのだが、予想したほどの成果を得ることができず、予定していた邦楽器と合奏する試みを実現することができなかった。ただし、別の角度から考えるならば、ヴァイオリンの独習がどれほど困難なことであるかということが、十分に理解できた。
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