研究課題/領域番号 |
24520156
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
阪井 葉子(三谷葉子) 大阪大学, 文学研究科, 招へい研究員 (50243142)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ポピュラー文化 / 国際情報交換 / ドイツ、オーストリア / フォークリバイバル / メディア社会 / 文化的マイノリティ / 口承性 / 対抗文化 |
研究実績の概要 |
研究代表者はドイツのフォークリバイバル運動における民謡・伝統歌謡の役割について、研究を進める上で不可欠な、民謡を主要レパートリーにする代表的なグループ「ツプフガイゲンハンゼル」についての調査を進めた。これまで蓄積した文書データの精査に加え、今年度はドイツへの出張ができなかったため、主要メンバーのひとりエーリヒ・シュメッケンベヒャーにe-maiilでコンタクトを取り、情報提供について幸い快諾を得た。「ツプフガイゲンハンゼル」のメンバーがドイツ各地の文書館を訪れて膨大な資料を収集し、それらを研究しながら独自の民謡レパートリーを編んできたことは、かねてから知られていた。シュメッケンベヒャーとのインタビューを通じて、彼らの発掘した民謡レパートリーが、東ドイツでも広く浸透していたこと、また、民謡や伝統歌謡を新たなアレンジ・新たなコンテクストで歌うことにたいする、ドイツのフォーク歌手たちの考え方に、相当の温度差があったことなどが、明らかになった。 研究代表者は一方で、シュメッケンベヒャーを含む多くのドイツのフォーク歌手が、東方ユダヤ人の民謡をうたってきたことの意義についても研究を進め、ドイツでもっとも頻繁に取りあげられたユダヤ人歌手・作曲家のモルデハイ・ゲビルティグについて、論文をまとめた。 連携研究者は、オーストリアにおけるロマの伝統音楽についての研究を進めるとともに、日本における少数者<難民)音楽活動についても調査をおこない、国際学会で発表した。学会ならびに研究会のために2度大阪を訪れ、研究代表者と密接な研究情報の交換をおこなうことができた。 研究協力者は、ベルリン・ポツダムへの調査旅行をおこない、東ドイツの流行音楽についての調査を進めた。今回は新たに、社会主義国での流行音楽の浸透におけるラジオの役割に注目した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度は、研究代表者はこれまで蓄積した資料ならびにメールを通じてフォークリバイバル関係者から得た情報をもとに、研究内容を整理し、その一部を学会誌に発表した。前年度よりも連携研究者・研究協力者と連絡を取り合う機会が増え、今後の研究の進展について見通しを出し合うことができた。 連携研究者は、国際学会で大阪を訪れたウィーンでの指導教授との話し合いで、今後の研究計画をいっそう明確にすることができた。また、研究協力者は、ドイツでの調査により、東ドイツの流行音楽とくにロックのリスナーへの浸透において、メディアが果たしてきた役割について新たに知見を得た。 一方、研究代表者は病気治療が長引いたこともあって、ドイツへの調査旅行を断念し、インフォーマントたちと相談しながら、調査旅行を平成27年度に延期した。 また、連携研究者・研究協力者の本務が多忙で、今年度に予定していたシンポジウムを開催することができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度には、研究代表者は前年度に断念したドイツへの調査旅行をおこない、ドイツのフォークリバイバル運動についての文字資料(新聞・雑誌の批評や研究論文)の追加収集と、予定していた関係者へのインタビュー調査を完了する。蓄積したデータをもとに、著書執筆の準備をするとともに、口頭発表や学術論文の形でも成果を発表していく。 研究協力者・連携研究者との連絡をさらに密にし、他のポピュラー文化ならびに民俗音楽の研究者たちとも情報を交換し合う。 連携研究者はオーストリア・ロマ、とくにロヴァーラと呼ばれるハンガリー・スロバキアから移住してきたロマのサブグループのレパートリーと、ヨーロッパに広く分布する民謡モチーフとの関連について研究を進め、オーストリアのフォークリバイバルにおける彼らの役割について考察する。 研究協力者は、東ドイツの流行音楽とメディアの関係についての研究を進め、西ドイツのフォークリバイバルと併せて東ドイツのフォークリバイバルについても調査している研究代表者と、互いに情報を付きあわせながら、東ドイツのロックとフォーク音楽の関係や、両者を取り巻く社会状況の類似ならびに差異について考察していく。
年度中に、それぞれの研究成果を広く発信するためにシンポジウムを開催する。年度の終わりには、研究成果を報告書にまとめる。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究代表者の病気治療が長引き、海外での調査がおこなえなかったことに加え、今年度に初めて常勤職に就いた研究協力者が多忙で、やはり予定外の海外出張が入るなど多忙だった連携研究者とともに、シンポジウムを開催する計画を実現できなかった。 このため、海外旅費ならびに国内旅費の支出が予定より大幅に少なくなった。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度は、研究代表者が長期の海外調査をおこなう。また、研究代表者・連携研究者・研究協力者のいずれも、シンポジウム開催や研究相談のための国内出張をおこなうため、それらの旅費に平成26年度から繰り越した分も合わせた助成金を充てる。 また、研究資料の整理のためにアルバイトの謝金を支出する。
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