研究課題/領域番号 |
24520163
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研究機関 | 大分大学 |
研究代表者 |
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キーワード | 医療人文学 / データベース |
研究概要 |
本研究の目的は、日本では初めてとなる医療人文学のデータベース(MHDJ)を構築することである。これは医療人文学に関連のある文学作品や映画を基に構築し、コミュニケーションや共感の重要性、患者の病気体験に対する配慮などの医療人文学的洞察を日本人医療関係者に与えることを目的とする。この概念はニューヨーク大学医学部で構築された医療人文学データベースをベースとしている。しかし、このデータベースが英語を母語とする人を対象にしたものであるのに対し、本研究で構築する医療人文学データベースは、外国語として英語を学習している日本人を対象としている。そのため、本研究における医療人文学データベースの内容は、英語と日本語の二言語で記載している。データベース上の作品は英語版も日本語版も出版されているが、利用者の利便性を考慮し、言語を選択できるよう配慮している。文学作品の概要については、本来英語で書かれたものを日本語に翻訳したものもあれば、逆に日本語で書かれたものを英語に翻訳したものもある。日本語版の英訳を付したのは、日本人の利用者に日本の作品を英語で読む機会を提供するためだけでなく、日本文学や文化を外国人に紹介し、医療に関連した日本文学を世界中の医療関係者に紹介するためでもある。データベースに掲載されている映画の使用言語は全て英語であるが、日本語字幕付きである。また、MHDJ上の全ての文学作品及び映画には、利用者にその作品の医療人文学的価値を説明する英語と日本語の注釈を付している。MHDJの目的は国際的な医療マインドの向上させ、映画や文学作品を通して日本語と英語を話す2つの医療界を近づけることにある。本研究によるMHDJに適切な作品の検証を通して、日本には医療人文学に適した文学作品が多いことが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2013年度は、MHDJのウェブサイトの構築を行った。そのため、ウェブサイトの契約およびドメインの購入のために科研費を利用した。本研究によって構築されたデータベースは現在インターネット上のウェブサイト( URL: http://www.medicalhumanitiesjapan.com. )で閲覧可能である。現在の閲覧可能なデータベースの内容は、65作品のデータである。2013年度は、研究計画に従って、データベースに掲載する文学作品の選定を行った。その際に、日本人利用者の英語レベルに適した作品を選定するよう配慮した。その結果、MHDJ上の全ての作品が英語版も日本語版も出版されているものとなり、利便性の向上につながった。まず第一に、英文学の日本語翻訳版を利用することができるため、データベース上の作品に関しては言葉の壁を取り払うことが可能となった。そのため、英語で文学作品を読むことができない日本人であっても、日本語翻訳版から英文学作品内の多くの情報を吸収することができるのである。第二に、データベース上には英訳されている日本文学作品も掲載されているため、日本人の英語学習者が既知のストーリーを通して効率的に英語を学習することも可能である。さらに、英訳版が出版されていることにより、医療に関連した日本文学を世界中の医療関係者に紹介することも可能となる。MHDJ上の全ての文学作品と映画には、注釈を付している。この注釈に関しては、単に作品の概要を示すだけではなく、利用者により多くの情報を提供することができるように、今年度改良を図った。改良版の注釈には、医療人文学に対する示唆に富む作家や俳優もしくは監督のコメントなども含まれている。この注釈は、英語と日本語の二言語で掲載する予定である。当初の計画では、2013年度中に二言語での注釈を完成させる予定であったが、翻訳作業がまだ途中段階である。
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今後の研究の推進方策 |
現在、 データベースのデザインやフォーマットは完成し、インターネット上で閲覧可能である。そこで、今年度はデータベースに掲載する文学作品や映画作品の量的な拡充と全ての注釈の日本語版の完成を目標とする。特に、医療人文学に関連し、英訳版が出版されている日本文学作品に焦点を置き、検証を行う予定である。というのも、英訳版付き日本文学作品をデータベース上に多く掲載することにより、日本の文学や映画を海外の医療関係者に広く紹介することができるだけでなく、日本人英語学習者が自分の興味や英語レベルに合わせて英語を学習する機会が広がる可能性があるからである。データベースの内容が拡充すれば、インターネットのコンテンツ管理システムをモニターすることが必要である。また、内容の一貫性を維持し、利用者の利便性を向上させるために、修正を要する場合もありうる。また、研究担当者の連絡先はウェブ上のMHDJ内に掲載されているため、利用者からの質問やフィードバック等が寄せられる可能性もある。そこで、2014年度は、多くの利用者と意見交換を行うことによって、データベースの質的および量的拡充を行い、MHDJへのアクセス数の向上を図ることを目標とする。また、この研究成果については、学会等で発表し、日本における医療人文学のネットワーク作りに寄与したいと考えている。
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次年度の研究費の使用計画 |
データベース上の文学作品と映画の質的拡充を図るために、選定基準および注釈に掲載する内容等の再考を行った。注釈は英語と日本語の二言語で掲載する予定であるが、上記の理由のため、注釈の英訳版作成に遅れが生じた。さらに、医療人文学は特殊な分野であるため、一般英語のみならず医学英語および海外の医療事情に精通している必要がある。そのため、日本語翻訳者として適任者を選定することに時間を要し、2013年度中に決定することができなかった。そのため、日本語翻訳に必要な謝礼が2013年度に発生せず、次年度(2014年度)使用額が生じた。 2013年度に英語版の注釈は完成した。そこで、2013年度に使用できなかった日本語翻訳に必要な謝礼を用いて、注釈の日本語版を完成させる。すでに、医療人文学データベースに理解および関心を持ち、英語や海外の医療事情に精通した日本語翻訳に依頼済みであるので、今年度前期中に日本語版を完成させる予定である。その後、英語と日本語の二言語をインターネット上にアップすることによって、日本医療人文学データベース(MHDJ)を完成させる。その為の経費として前年度未使用額を使用する。
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