最終年度の研究成果 2017年5月に、北京廊坊で3日間開催されたコンベンションにて、中国の現況を確認した。9月にはパリで小規模な講演をしたのち、イギリスのロンドンでは、タトゥー関連資料のあるWellcome Collectionを見学した。また、エセックス大学でタトゥー史を研究するMatt Lodder氏と懇談した。Lodder氏と今後の共同研究について話し合った後、ゲストキュレーターであるLodder氏の紹介でコーンウェル国立海事博物館の特別展「Tattoo :British Tattoo Art Revealed」を見学した。さらに、オックスフォード大学付属Pitt Rivers博物館にて、1906年8月に神戸で収集された日本人彫師の下絵を調査し、同大学付属図書館でも資料調査を実施した。10月には日本民俗学会第 69 回年会、11月には台湾の台東でおこなわれた第三屆「卑南學」學術研討會で成果を発表した。
研究期間全体の成果 本課題の目標は、おおむね達せられたと考える。今回、欧米と香港、シンガポールなどで幅広く資料調査をおこなった。19世紀末から20世紀初頭にかけて、海外へ出稼ぎ、移民していた日本人彫師が、どの地域に主に集中していたのかを確認した。渡航の際、船が主要な交通手段であった時代は、横浜、神戸、長崎を中心として、客を彫師のもとに効率よく送りこむ、外国人旅行者向けホテル、古美術商、写真師、彫師間のネットワークが形成されていた可能性があった。欧米に日本人彫師が仕事をしたことは、2010年に小山騰が著書で明らかにした。本研究では、その後さらに充実した新聞や雑誌、論文、古写真などの各種データベースを利用することによって、英米で活躍したYoshisuke Horitoyoの足どりを詳細にたどることができた。さらに、欧米や東南アジアに複数の日本人彫師が移住していたことを明らかにした。
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