研究課題/領域番号 |
24520166
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
水野 みか子 名古屋市立大学, 芸術工学研究科(研究院), 教授 (50295622)
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キーワード | 国際研究者交流 / 国際情報交換 / ネットワーク・コンサート / ピエール・シェフェール / 現代音楽研究 / 電子音響音楽 |
研究概要 |
平成25年度中に、当該研究「「現代音楽における<ひびき>の概念と表現様相」に関して、以下を実施した。 現代音楽における<ひびき>の概念を変革した音楽家のひとりであるピエール・シェフェールに関して、第二次世界大戦前および大戦中の演劇活動とラジオ活動に焦点をあてて研究を進め、《Tobie》《Portique》 の台本内容と上演実施状況およびラジオのシリーズ番組《Le Coquille à la Planètes》の成立背景の詳細について、日本音楽学会の全国大会において発表した。 平成24年度より現地調査を進めた、邦人作曲家の初期GRMでの活動に関して、現地資料と日本国内資料の比較を行いながら考察し、その成果を「国際電子音響音楽研究学会」において発表した。 コンピュータ音楽おける<ひびき>が現代オペラに応用された事例視察をパリにて行った。名古屋市立大学においてフランス電子音響音楽の作曲家を招いたレクチャー・コンサートを開催し、電子音響制作のコンテンツの日仏比較について研究交流を行った。インタラクティヴ音楽を創作し、二つの作品を初演した。 テレマティック音楽の<ひびき>と上演形態とその手法に関する実践として、「アジアコンピュータ音楽プロジェクト2013」のホストの立場で「ネットワーク・コンサート2013」を台湾と日本4ケ所の間で実現し、詳細な実施報告書を作成した。当該コンサートでは、オリジナルのチュートリアル・テキストを作成してそれを台湾の二大学と共有し、リハーサルとしてのチュートリアル・ワークショップを10回程度実施した。台湾で開催された「音楽音響テクノロジー・ワークショップ」において実施報告を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該研究に関して平成25年度に一定程度進行したと評価できる。 第一に、ピエール・シェフェールの音響オブジェ論の背景として看過できない初期活動である演劇台本作成・宗教系思想雑誌の編集や寄稿・演劇の企画と演出について調査し、学会等で発表することができた。独仏戦争直前のシェフェールの演劇活動について初版本から調査し、二次資料からではあるが戦争中の対独コラボラシオンからレジスタンスに至る経緯を調査した。また、シェフェールと実際に活動していたフランス人研究者や音楽家から情報を得ることができ、また、シェフェールが創始した音楽研究グループGRM の未公開資料の調査内容を日本国内資料や当事者との対話によって確認した。 第二に、インタラクティブ音楽のシステム設計として、MAX/mspをLiveと連動させて、より速く、より制御しやすい上演形態を構築し、愛知県芸術劇場、電気文化開館といったホールにおいてインタラクティブ電子音響音楽作品として発表した。この新しいインタラクティヴ性により、より自然な室内楽的形態よる電子音響を生み出すことができた。 第三に、東京電機大学、台湾国立交通大学、台湾開南大学と名古屋市立大学という合計四地点を結ぶネットワーク・コンサートを企画・推進し、四地点同時演奏を実現した。名古屋市立大学会場には四つのSkype接続とJackTrip接続を整え、PAシステムとの連動において上演した五作品はU-streamで配信した。また、上演に先だって、7ケ月間にわたって10回以上の接続リハーサルやテクニカル・チェックを行い、オリジナルのチュートリアル・テキストやステージ進行シナリオを作成した。 反省点としては、第四の視点である「スペクトル楽派」に関する音楽学的分析について、クセナキス作品に集注しており、その他の作品のスコア分析が遅れていることである。
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今後の研究の推進方策 |
I.クセナキスを中心にPh.マヌリやマルク=A. ダルバヴィをはじめとするポスト・スペクトル世代の作品群について、スコアへの楽曲分析、IRCAMの音響解析システム(AudioSculpt)による周波数解析、MAX/mspを用いて作曲家たちの作曲理論をオーディオ波形に再現する試みを実施する。平成24-25年度に行なったシェフェール初期活動の調査結果を活かして、ピエール・シェフェールの主著であるTraité des Objets Musicaux (以下TOM)の第5巻、第6巻の部分訳と解釈を行う。 視聴覚インタラクティヴ作品、すなわち、情報マスター側(身体)の視覚像がスレーブとしての音になるときの「ひびき」の認識と、音声がマスターになって映像等の視覚像がスレーブになる際の「ひびき」への集中度とに関して、特別な理念を持つ作品を主な研究対象とする。また、類似形態の電子音響音楽作品を作曲し、日本電子音楽協会主催の演奏会等で発表する。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度は研究の最終年として資料整理や論文等執筆に研究費を使用するが、当該年度の小額持ち越し金も合わせてその費用とするため。 次年度は研究の最終年として資料をそろえて論文等執筆に研究費を使用する。
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