研究課題/領域番号 |
24520176
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研究機関 | 東京音楽大学 |
研究代表者 |
太田 暁子 東京音楽大学, 音楽学部, 講師 (90399741)
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キーワード | 音楽学 / 日本音楽史 |
研究概要 |
2013年度は、2012年度に引き続き、資料の収集とその内容を検討することを課題とした。本研究は幕府、朝廷、寺社、楽家のいずれとも深く関係があった公家である菊亭家(今出川家)旧蔵資料のなかでも、雅楽関係資料をもとに、菊亭家の雅楽への関わり方を検討することによって、江戸時代の奏楽の実態に関する一側面を公家側の視点から解明しようと試みている。 先ず(1)国内外に所蔵される雅楽関係資料を比較検討する、(2)日次記を読み解く、ことを作業の中心に据え、各資料成立の背景を物証から可能な限り明らかにすることを試みてきた。菊亭家旧蔵雅楽関係資料は主に京都大、専修大の各図書館が所蔵する国内資料が知られているが、そこにケンブリッジ大学図書館が所蔵する雅楽関係資料を加え、2012年度に引き続きその相関関係の検討も行った。 研究代表者は先行調査にて、ケンブリッジに「禎子」、「光子」の女性名が表紙に記された『龍笛仮名譜』が各1冊ずつ存在することを確認している。この2冊の写本は装丁、法量、書式、書体、収録曲とも同一である。禎子は菊亭家当主である実種(1754-1801)の正妻、光子は実種の娘であり、この2冊とも記したのは実種だと思われる。この『龍笛仮名譜』に関する詳細は、研究成果の一部として「ケンブリッジ大学図書館所蔵の菊亭家旧蔵雅楽関係資料目録 其ノ二 特徴的な資料① 女性名の記された『龍笛仮名譜』」(東京音楽大学研究紀要 第37集)に掲載した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究は基礎的な資料研究であり、その手段は資料を収集し、読み解くことに主眼が置かれる。しかし今年度はその作業は思ったようには進んでいないように感じられた。資料収集は行ったものの、当初目標としていた量には届かなかったが、その原因として整理と解読の作業が思いのほか停滞したことに加え、資料同士の関連性に確信が持ちきれない考察が出た結果、資料収集の対象を検討し直す時間を要したことも大きい。しかしこれは次年度に結果を出すべく必要な作業であった。また、資料の解題を作成するという作業の一部を研究結果として公開したことを踏まえ、達成度を評価した。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度として研究成果をまとめる。 作業としては基本的には資料収集、整理、検討を続けるが、菊亭家旧蔵資料のみならず、菊亭家に関することが記された他家の資料も検討対象とする。成果を発表することに関しては雅楽譜の解題を作成することに主眼を置く。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度が本研究の最終年度であるが、研究成果を資料解題という具体的な形で公表する諸手続のために次年度に海外渡航の必要性が生じたことに加え、新たに資料の撮影・掲載料など、諸手続に関する費用が生じること、為替に対する懸念があること、などから費用の掛からない作業を年度中に優先的に行い、費用の掛かる作業を次年度に回したため次年度使用額が生じた。 資料複写および解題出版に関する費用と、海外渡航費として主に使用する。また、研究成果公開に関する準備に関して外部に作業を依頼する可能性が高く、その労力に対しては資料整理支援者雇用費として計上した謝金を充当する。
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