当時の正史・儀式書・記録類の記述から、古代日本の儀礼では「いつ」「どこで」「誰が」「何を」「どのように」演じ、またそれを視て聴いていたのかを明らかにし、更にそれらは「なぜ」だったのかを政治的背景から考察した。具体的に扱ったのは、葬送儀礼、行幸、大嘗祭、正月の大饗、旬儀、五月五日および相撲節の芸能である。その結果、日本では古来在地の芸能は土地の霊力の象徴とされ、それを視て聴くことが支配者たる必須要件であったこと、律令制と同時に中国から支配者の徳を流布するための芸能とその概念が導入された可能性が高いこと、そして前者の概念は近衛府の、後者のそれは雅楽寮の芸能が其々表象していたことを指摘した。
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