研究課題/領域番号 |
24520181
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研究機関 | 武蔵野美術大学 |
研究代表者 |
シャルル クリストフ 武蔵野美術大学, 造形学部, 教授 (50319224)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | メディアアート / ビデオアート / 山口勝弘 / アーカイブ化 / データベース化 |
研究実績の概要 |
本研究は、1950年代以降活動し続けてきたメディアアートの先駆者、山口勝弘の資料(手稿、印刷物、写真、映像など)をアーカイブ化することにより、戦後の日本におけるメディアテクノロジーを用いた芸術、すなわち「メディアアート」を研究しようとするものである。
平成26年度には、それまでデジタル化した資料を整理し、アーカイブ化・データベース化に必要な機材(音声と映像のコンバーター、テープ再生機など)を揃え、デジタル化作業を続けた。山口勝弘の個人・グループ制作の関連記事、評論活動や教育活動の関連記事等を閲覧し、整理し、テキストや図版、写真などの資料を一部デジタル化した。現時点ではテキスト資料1500件以上をデジタル化した。山口勝弘の個人作品や映像資料の閲覧や整理も行い続けた。VHSビデオテープ、DVビデオテープ、8ミリビデオテープ、音声テープ、U-Maticテープを合計500本以上のデジタル化を行なった。資料の閲覧、整理や分析以外は、本研究の出版の形態と可能性(文章及び音響・映像資料と文献資料の、インターネット及び印刷物の出版)について検討している。27年度に研究の最終的なまとめを行い、ウエブサイトを立ち上げ、これまでデジタル化したデータを閲覧できるようにする予定である。
26年度に「横浜市民ギャラリーあざみ野」で行なわれた山口勝弘の個展「水の変容」のパネルとカタログのために、山口勝弘活動年表の作成した。オーストリアの「アルス・エレクトロニカ」フェスティバルの「Visionary Pioneers of Media Art」賞のための資料作成を行なった。そしてニューヨークとフィラデルフィアで行なわれる予定の日本の初期ビデオアート展(1960年代~1970年代)の準備を進めている。「Collaborative Cataloging Japan」組織の企画で、「Asia Art Archive in America」の協力によって、上映会・シンポジウムも含めてこの展覧会を2015年10月~2016年3月に開催する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
山口勝弘の大井のアトリエから武蔵野美術大学の研究室に移動した資料のアーカイブ化を最終段階に入る。この作業を24年度から行っており、対象になる資料(テキスト及び映像・音声資料)の80%程度のデジタル化は完成した。
一方、日本のメディアアートへの海外からの関心も強くなりつつあり、特にアメリカなどで情報収集及びアーカイブに力を入れている団体や出版社も出てきている。関心を見せている組織(ニューヨークのEAI社、フィラデルフィアのCCJ団体など)や個人の研究者に可能な限りの協力をいただいている。
本業である武蔵野美術大学映像学科での教育活動及び制作活動を行いながら本研究を進めている。学生が日本のメディアアートの歴史を知ることは重要であるので、授業に於いて本研究の成果を反映するかたちで、学生にもその研究に関わる手伝い等を呼びかけた。平成24年と25年に東京都内や近県(国立新美術館、千葉美術館、神奈川県立近代美術館、世田谷美術館、等)に複数の展覧会及びレクチャー等も行われたこともきっかけとなり、学生は関心を見せるようになった。
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今後の研究の推進方策 |
山口勝弘の大井のアトリエから武蔵野美術大学の研究室に移動した資料のアーカイブ化を最終段階に入り、対象になる資料(テキスト及び映像・音声資料)の残り20%のデジタル化を完成する。残り数十本のU-MATICとVHSテープを27年度前半にデジタル化する予定である。映像ダビング用の3/4インチのビデオプレヤーは故障していたが、別なプレイヤーを調達することが出来たので、現在作業を継続している。
27年度後期には、映像・音声資料とテキスト資料の分類、各カテゴリーの説明、内容の概略、関係者のインタビューのまとめ、インターネット上で有効に閲覧できるアーカイブの作成、などの作業を進める。今後の課題として、映像・音響資料の保存に関する技術的な知識を取得すること、アメリカと日本での映像のアーカイブ化を進めている機関(CCJ、東京国立近代美術館フィルムセンター、国立新美術館、東京現代美術館、東京写真美術館、川崎市民ミュージアムなど)、教育機関や個人の研究者と共同で、組織化の可能性を検討したいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
映像ダビング用の3/4インチのビデオプレヤーは故障していたが、別なプレイヤーを調達することが無料で出来たので、その分の経費は未使用になっている。また、淡路島の山勝工場の調査をこれから行なう予定で、現在その経費を使用していない。
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次年度使用額の使用計画 |
1- 淡路島の「山勝工場」の中身を調査し、関西の関係者インタビューのための交通費、宿泊費、打ち合わせ費。2- 海外の関係者インタビューを行うための必要経費(海外航空券及び滞在費)は調整中である(7月~10月の間、2回ヨーロッパを訪ねる予定)。3- デジタル化した文章や映像の資料、インタビューした内容の編集のためにアルバイトを依頼する予定:テキストデジタル化(スキャニング)やVHS・U-Maticビデオテープ、オーディオテープのダビング作業に必要経費(学部生及び大学院生数名分アルバイト代。4- ウエブサイトを制作し、立ち上げるための経費。
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