本研究は、1950年代以降活動し続けてきたメディアアートの先駆者、山口勝弘の資料(手稿、印刷物、写真、音声、映像など)をアーカイブ化することで、戦後の日本におけるメディアテクノロジーを用いた芸術、すなわち「メディアアート」を研究しようとするものである。 平成27年度には、科学研究費の予算で揃えた、データベース化に必要な機材(テープ再生機、音声と映像のコンバーター、スキャナー、コンピュータなど)を使用し、山口氏の東京都品川区大井町のアトリエ内全ての資料、予定していたデータ化の作業は終了。 資料の閲覧、整理や分析以外は、本研究の出版の形態と可能性(文章及び音響・映像資料と文献資料の、インターネット及び印刷物の出版)について検討した結果、平成28年6月までウエブサイトを立ち上げ、これまでデジタル化したデータを公開し、世界中の研究者に閲覧可能にする。 2015年9月にニューヨークとフィラデルフィアで、日本初期ビデオアート展(1960年代~1970年代)を行った。2016年2月に、日本と韓国のメディアアートのアーカイブプロジェクトを進めている他の研究者と「日韓シンポジウム:メディアアートのアーカイブは可能か」というシンポジウムに参加。技術的な面も含めて、その活動の今後の方法論と発展の可能性について検討した。また、アメリカ・フィラデルフィアの「Collaborative Cataloging Japan」組織の企画で、「Asia Art Archive in America」の協力により、研究会とシンポジウムを2016年5月末に開催し、今後も研究活動を広げる予定である。 山口勝弘の大井アトリエの資料は膨大にあり、整理、分析、翻訳作業など今後も続く。淡路島の倉庫「山勝工場」にあった資料(書籍、カタログ、その他の資料約10000冊)を2016年2月に武蔵野美術大学の研究室に運搬した。その整理とデータ化を行い始めたので、山口勝弘アーカイブにはその分も加わる。
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