研究課題/領域番号 |
24520183
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
杉山 千鶴 早稲田大学, スポーツ科学学術院, 教授 (40216346)
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研究分担者 |
中野 正昭 明治大学, 文学部, その他 (40409727)
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キーワード | 帝国劇場歌劇部 / 浅草オペラ / ダンス / 小森敏 / バレエ |
研究概要 |
2013年度においては、以下の実績を示した。 ①帝国劇場歌劇部第1期生であり、海外(アメリカ、フランス)で長期間活動した舞踊家小森敏について、2013年8月6日に公開シンポジウム「舞踊家・小森敏(1887-1951)を知る」を新宿区角筈区民ホールにて開催した。本シンポジウムは3部からなる。第1部「人を知る」では本研究代表者の杉山が小森の帝国劇場歌劇部時代について、また小森の詳細な伝記を著した茂木秀夫氏がフランス時代について、また小森の晩年の愛弟子である藤井利子氏が帰国後について講演を行った。第2部「舞踊を知る」では、藤井氏が復元した小森敏の作品のうち2作品が、藤井氏の解説とともに藤井氏の門下生によって上演された。第3部は第1部の講演者、第2部の実演者が揃い、檀上に続いてフロアを交えてディスカッションを行った。ここでは、小森の作品に見られる技法が、門下である藤井公・利子両氏の作品に継承されているという貴重な指摘を受けることができた。 ②浅草オペラ(1910年代中期~1920年代中期)を代表し、その後も浅草の軽演劇において活動した2名について論考を発表した。研究分担者の中野は、帝国劇場歌劇部出身の沢モリノについて、浅草オペラ期に特化した論考を明治大学文学部紀要『文芸研究』122号に、研究代表者の杉山は、沢とともに浅草オペラの初期のブレイクを招いた河合澄子について、浅草オペラから以後の浅草軽演劇まで視野に入れた論考を瀬戸・杉山編『近代日本の身体表象』(森話社)に発表した。 ③日本において社交ダンスを普及させた玉置真吉が浅草オペラで活動していたことを受け、当時の資料を提供し、研究資料の共著者として『舞踊学』第36号に発表した。 ④収集した現物資料(公演プログラム、ブロマイド等)について項目ごとにデータベース化した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
従来のモダンダンス草創期に関する研究において十分に検討されることのなかった3名のうち、本年度は小森敏を最優先とし、現時点で得られた情報をもとにシンポジウムを開催し、また小森の実践したリトミックについて藤井利子氏から聞き取りを行った。シンポジウム時には小森の足跡を追い、また作品の復元上演も行ったが、会場の都合により、当初予定していた現物の展示がかなわなかった。これについては別の機会に行う予定である。他の2名については資料を収集するにとどまっている。
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今後の研究の推進方策 |
これまでは主に研究代表者と研究分担者が個別に研究を行ってきた。今後は本研究課題で扱う人物等や関連領域の研究者の協力を仰ぎ知見を得て、以下について広く研究を進めて行く方針である。 1.モダンダンス草創によるリトミック教育について。引き続き小森敏について、資料や藤井利子氏へのインタビュー等の調査を進める。加えて伊藤道郎の門下生や伊藤を研究対象とする音楽学・演劇学の研究者より、伊藤とリトミックの関係、伊藤の実践したリトミック教育について調査する。当初予定していた岩村和雄については、本人の夭折もあり資料が非常に少ないことから、今後の調査次第では対象から外す可能性がある。 2.浅草オペラで上演された舞踊について。未見の資料を調査する他、音楽的要素・演劇的要素・娯楽的要素にも注目し、それぞれの研究者を招聘して公開シンポジウムを開催し、浅草オペラを広く理解するとともに、そこにおける舞踊の意義を明らかにする。 また、従来通りに現物資料の収集を可能な限り進め、これのデータベース化を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究代表者が8月中旬に自宅療養をしていたために、同時期に予定していた資料収集の旅費と、また同時期に締め切った学会発表の申込みが出来なかったことによる学会出張の旅費を支出できなかったことによる。 地方開催の学会大会での研究発表ならびに関西における資料収集の旅費、また複写不可能な現物資料や関連書籍を購入する物品費、インタビュー等研究への協力にや資料・データ整理のアルバイト謝金、資料収集の際に必要な入館料や複写費に用いる。 また浅草オペラをテーマにした公開シンポジウムと展示を同時開催するため、会場使用料、機材使用料やシンポジストへの謝金を要する。当該年度のシンポジウム時のパンフレットは印刷費は不要であったが、次年度は冊子形態で図版を掲載したものを作成するため、次年度使用額をこれに充てることとなる。シンポジウムの開催案内、終了後のパンフレット送付など、通信費も必要とされる。
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