前年度以前に引き続いて、演劇雑誌の発掘と、整理を進めた。 現在、147タイトルの演劇関連雑誌について、電子化の整理検討と、目次の整理を進めるに至った。前年度のおよそ1.5倍のタイトル数を数える。目次の整理と並行して、雑誌の公開・紹介の検討も行い、テストケースとして、演劇博物館における展示「寄らば斬るぞ!――新国劇と剣劇の世界」において、雑誌「新国劇」35冊の全ページの複写を展示会場でPDF公開する機会を得た。また、演劇雑誌をはじめとするメディアの歴史や演劇ジャンルの階層化をめぐって、日仏演劇学会(ストラスブール大学)における研究発表「日本における劇場の分布と演劇の階層化」、およびAAS(Association for Asian Studies)シカゴ大会における研究発表「A Media Hisotry of Kabuki and Actor's Body」をおこなう機会を得た。これらによって、歌舞伎を中心とする演劇雑誌の存在を、演劇をめぐるメディア研究の中に位置づけるとともに、その重要性を再認識させる足がかりを得た。 前年度に続き、公共機関にない雑誌や、従来言及されたことのない雑誌の出現も少なからずあり、とりわけ「演藝写真」(1922~1927)や「演藝」(1925~1926)は、舞台写真の歴史を考える上で重要な雑誌であることが判明した。また、これまで知られていない「藝界」(1911年)が、のちに劇作家として大成する行友李風が劇作修業時代に主宰し、習作も載せている点で注目に値する雑誌であることなどもわかった。こうした新発掘の新資料が相次いだこともあり、目次の整理と入力作業の進捗がややはかばかしくないまま、期間を終了することとなってしまった。この点については、本研究の後継と位置づけられる次年度以降の演劇とメディアをめぐる科研費事業において、さらに補ってゆく予定である。
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