研究課題/領域番号 |
24520186
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
丸本 隆 早稲田大学, 法学学術院, 教授 (60030186)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | ヴェルディ・オペラ受容(ドイツ) |
研究概要 |
本研究者は過去3年間、科学研究費による「ヴェルディ・オペラの総合研究の一環としての「イタリア」と「ドイツ」の関係性の考察」と題する研究を推進してきた。本課題はその成果の基礎の上に立ち、その課題の一部を構成していた「ドイツにおけるヴェルディ受容」の問題に的を絞り、新たなテーマ設定のもとに、ヴェルディ・オペラの本質理解に関わる考察をさらに深めていくものとして構想された。そうした事情を背景に、1年目に当たる2012年度は、(1) まずこれまで蓄積してきた成果を本課題用に再編成しつつ、強力なデータベースを構築すること、(2) それでもなお不足する資料や新刊の書籍・論文等の収集に努めること、(3) それらの資料をベースに、本課題にとって重要な鍵を握るテーマの一つとなる、20世紀前半のヴァイマル共和国期に顕著に現れた「ヴェルディ・ルネサンス」と呼ばれる現象についての考察を進める、という3本の柱を設定して作業を行ってきた。 それぞれの作業は日常的に不断に進めてきたが、(2) については特に、ドイツとイタリアに出張し、現地の図書館、研究機関、書店などを回って多量の資料を収集し、(3) については、ヴェルディ存命中の19世紀、一般観客の熱狂的な支持とは逆にヴェルディ・オペラに冷淡な反応を示したドイツの知識階級が、ヴァイマル共和国期に一転して大きな関心を寄せはじめ、「ルネサンス」のフィーバーを呼び起こした歴史的意義について、資料を紐解きながら考察を深めた。 本研究に関連する成果として、ヴェルディの代表的なオペラである《アイーダ》にテーマ設定した、日本およびドイツにおける受容の問題とも関わる英文の論文を、ドイツの図書(研究論文集)に寄稿し、その刊行をみた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度の計画として設定したのはまず、文献資料(リブレット、楽譜、雑誌記事、論文、研究書等)および映像資料(オペラ上演を記録したDVDなど)の収集であったが、国内の図書館における調査・収集、海外の書店からの取り寄せに加えて、夏期と春期の休暇時を利用した海外出張(ドイツおよびイタリア)による作業によって、基本的な資料の入手が相当程度進展した。 特にベルリンでの作業では、総合3大学(フンボルト大学、自由大学、工科大学/芸術大学)の中央図書館や音楽・演劇関係の学部・研究所図書館、各種公立図書館が近距離の範囲内に集中するという利点を最大限に活用して、多大な成果を上げることができた。 また出張中における研究交流についても、とりわけベルリン自由大学のメーダー教授のゼミ、リージ教授のゼミに集う研究者との意見交換等を通じて、有益な情報の確保に努めた。 そうした諸種の作業によって得られた資料や情報を解読・分析しデータベース化する作業もかなり順調に進行したが、それらの成果はまず、翌年度春期に予定されているヴェルディ・オペラについての学会での基調講演、および研究会での口頭発表に生かされるはずである。 以上の理由により、当初の計画はおおむね順調に進展しているということができる。
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今後の研究の推進方策 |
ドイツにおけるヴェルディ・オペラ受容の歴史的変遷とその意味の考察を中心テーマに設定する本研究は、(1) ヴェルディのオペラ各作品のドイツにおける初演時、特に初期・中期と、(2) 作風の変化が注目された《アイーダ》(1871年初演、1874年ドイツ初演)以降、(3) 20世紀前半のヴァイマル共和国期の「ヴェルディ・ルネサンス」から第三帝国まで、(4) 第二次大戦後から今日にかけて、とする時代区分にしたがって、一般観客、批評家、ジャーナリズム、作曲家等専門的音楽人、政治家、学者・研究者等々が、受容・評価・解釈の変遷をめぐりどのように反応したか、その歴史をフォローしつつ、ヴェルディ・オペラの本質により深く迫ろうとするものである。 そして初年度の研究はこのうち、主に(3)に集中したが、今年度は(4)に焦点を定め、過去のヴェルディ観の見直しが活発化し、そのイメージが大きく修正されていく過程を取り扱っていき、さらに最終年度には、(1)、(2)にも考察を広げて、ヴェルディ受容に関する総合的な実態把握を目指す。 そうした研究のためには、今後さらに欧米における資料収集や調査が必要であり、各年1、2度の、勤務先の夏期・春期休暇等を利用した海外出張を通じて研究の基礎を構築していく予定である。 また、最終的に成果を論文等の著作に効果的に結実できるよう、これまで収集を進め、また今後も収集を続ける予定の、ヴェルディ研究に関する記述において圧倒的多数を占め、それぞれほぼ同等に必要不可欠な3言語(英語・ドイツ語・イタリア語)で書かれた文献をできるだけ多く読み進め、また映像資料に基づき各作品を詳細に分析しながら、データ・ベースを一層充実させていくことを、初年度と同様、日常的な作業の中心に据えていくつもりである。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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