本年度が本研究の最終年度に当たることから、これまでに収集しきれなかった資料の追加収集や、研究課題のまとめの作業を重点的に行った。そのため特に夏季休業期間中にベルリンに比較的長期間滞在し、フンボルト大学の音楽学部図書館や中央図書館、自由大学の演劇研究所図書館、芸術大学の中央図書館などで、資料収集にあたるとともにデータベース化や論文執筆作業を進めることによって、本研究を大きく進展させることができた。 その具体的な内容としては、昨年3月に演劇学会紀要『演劇学論集』に寄稿したヴェルディとリソルジメント・オペラにかかわるテーマ研究の成果をベースに、イタリアとドイツにおける19世紀のナショナリズムの一般的な特徴、さらにはそれが文化的なありかたやオペラという舞台メディアにいかに表現されたかというテーマと関連させつつ、18世紀後半に両文化圏に足場を置いたモーツァルトを起点とし19世紀後半のヴァーグナーへといたるより純粋なドイツ・オペラを目指すドイツ語圏のオペラの方向性との比較において、ヴェルディとその同時代のオペラについての考察を深めることができた。 その成果の一部は、本年2月、『人文論集』に掲載した論考や、早稲田大学オペラ/音楽劇研究所の定例研究会と兼ねて広く公開した本研究者の最終講義における発表、また現在、同研究所で企画中の出版物(2015年度中に刊行の予定)に取り入れることができた。さらには前述の出版物の企画において行われてきた、執筆者各自の原稿をもとにした相互批評やディスカッションを、本研究の一環と位置づけ積極的に参加したことも、本研究にとって有意義であった。こうしていくつかの有益な成果を得た結果、当初より予定している、本課題にテーマを設定した著作を執筆するための準備が整ったといえる状況にある。
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