研究課題/領域番号 |
24520194
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
伊豆原 月絵 日本大学, 理工学部, 教授 (40440036)
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研究分担者 |
片岡 淳 琉球大学, 教育学部, 名誉教授 (30204415)
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キーワード | ロココ / 復元的研究 / 美学 / 染織 / 養蚕 / 宮廷衣裳 / 蚕遺伝子源 / 手仕事の伝統と継承 |
研究概要 |
本研究は、18世紀のロココ時代のフランス宮廷衣裳の美意識を明らかにすることを目的とし、往時の欧州の蚕種を調査研究し、遺伝資源として保存されていた蚕種を飼育した。復元的研究では、オリジナルドレスのパターン、サイズ、縫製技法を再現するだけでなく、織物の風合いが、ドレスのフォルムに関係することから、衣裳の生地の風合いや美意識に拘り、蚕品種、製糸、染色、製織などの復元的研究を行った。 研究代表者の伊豆原月絵は、1.平成25年4月から8月にかけて、神戸ファッション美術館の織物について確認調査を行った。2.平成25年5月の春蚕期と初秋蚕期に、蚕業技術研究所の協力を得て、蚕種(卵)を育成し蚕の養蚕を行った。この蚕種は、現行の改良された蚕種に比べ、原原種で小さく弱いため、環境の僅かな変化にも反応するなど、繊細で弱く、育成が難しい。養蚕グループの長年に亘り蓄積した養蚕に関する知力(温度・湿度管理や飼料など)に加え、上蔟の際は、小さい蚕のため、自然上蔟ができず、蔟に入れる手作業を行うなど、熟練の技術と細やかで多大な労力の協力から、優れた研究成果が得られた。5.製糸は特殊蚕種を扱う製糸業者が生繭から座繰りで繰糸をし、代表者と研究協力者が検討を行い、温度、速度について記録した。6.研究代表者は、8月~9月にかけ、フランスに於いて織物および養蚕についての調査を行い、現状と往時の資料を入手した。7.織物の研究協力者が広幅の製織機を新たに考案し作成し、数種類の製織試験を行った。8.研究代表者は、フランスで得られた資料から染色試験を行い、染料を選定し、京都の染色研究機関の協力を得て、染色についても詳細な試験を行った。 このように、原原種の蚕種の養蚕および製糸、染色には、種々の問題が発生し、時間と高い技術力を要した。しかし、各研究機関および専門家の方々の協力を得られ、研究の進捗状況は、概ね順調であることを報告する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度までに、達成すべき項目は、概ね達成した。復元的研究の重要課題である、欧州種の原原種の養蚕については、平成24年から蚕業技術研究所に保存されていた欧州の蚕種を孵し、無事に増殖した蚕種(卵)6万頭を平成25年度は、研究所の協力で育成し、無事に上蔟し、繭を得た。また、その繭を座繰りの手法で繰糸を行い、白く光沢があり、細くて美しい糸が得られた。 次に、この復元織物用に手織りの織機を新たに作成し、製糸された糸を用いて製織試験を行い、検討を行った。また、染色技法および染色材料の検討後、専門家の協力を得られ、準備が整えられた。 現在は、整経段階であり、糸の下準備が整い次第、絣の作業にとりかかり、準じ製織へと進めるよう準備は整っている。以上のように、当初の計画どおりの進捗状況であることを報告する。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度は、1.欧州種の蚕種を生繭から座繰りで繰糸した糸を用いて手織りにより、白生地を製織する2.欧州蚕種の製糸した糸に天然染料を用いて染色を行う。3.絣糸作成は、試験により決定した天然染料を用いて技術者に要請する。4.制作された絣糸により研究協力者が製織し、宮廷衣裳の織物を復元する。5.手織りで製織した白生地を用いて、ドレス制作を行う。研究代表者が、このドレスのデザインは、欧州蚕種の特性を明らかになるよう考慮し作成する。6.研究協力者が、復元された宮廷衣裳の織物を用いて18世紀のロココ時代の宮廷衣裳の復元制作を行う。7.養蚕、製糸、染色、絣、製織の過程について、研究代表者が研究成果をまとめ、技術および美意識について報告する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度では、1.養蚕に際して、産業技術研究所の技術提供により、農家への謝礼金が生じなかったこと。2.染色材料については、各種試験を行ったが、染色作業に着手していないため、支払いが平成26年度4月以降に持ち越されたこと。3.織機の制作費、および試織に関する作業は、継続中のため、平成26年度4月以降に支払いが持ち越されたことが主な理由である。 1.平成25年度から継続して行っている各種染色試験の経費及び謝金2.織機の制作費、および試織に関する作業の経費および謝金 3.染色の謝礼金および染色材料などの実費 4.製織の謝礼金および実費 5.研究会開催費用 6.ビデオ編集謝礼金および実費 7.蚕業技術研究所出張旅費8.蚕糸科学研究所出張旅費 9.養蚕、製糸および製織の現場への監督および調査記録のための出張旅費 10.海外調査旅費 11.ドレス制作の参考文献購入費 12.ドレス制作の実費およびアシスタントへの謝礼 13.ドレス制作用機器のメンテナンス費用 14.用具代 15.中間報告発表会開催費用および招聘交通費および実費、16.資料整理および各種事務の謝礼金など、17.研究機関への分析依頼 18.蚕遺伝子源による養蚕および織物制作についての報告書作成の印刷費など以上が研究費予算の使用計画である。
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